忠孝さんは継父に頼まれて、その子の様子を見に行くことがあります。継父の実子は、地元で子どもの劇団に入っているので、忠孝さんが公演を観に行き、動画を撮ってきてあげるのです。
なんと優しい継息子か。高校生男子としては、ちょっと出来すぎた行動にも思えます。
「電車で1時間くらいですが、行けない距離ではないので。会えていないのはかわいそう、という同情もありますし、それにやっぱり(継父と自分は)実の親子とはまた違うので……」
よくよく話を聞くと、忠孝さんは継父に対して、だいぶ気を遣っているようです。
「すごくストレートに言えば、おカネを出してもらっているので、機嫌を損ねるわけにいかないんですよ。特にこれから大学に行くとなると。(継父は)僕には直接言わないですが、お母さんにはいろいろ言うこともあるらしくて」
離婚家庭の子どもが、おカネの問題から大学進学をあきらめるケースは多くありますが、実は再婚家庭でも、子どもたちはしばしば進学について悩んでいます。
費用を出す立場になることが多い継父自身、実子ではない子どものために多額のおカネを拠出することに割り切れない思いを抱えていることもありますし、それを察して実母も遠慮がちになる。そんなケースも少なくありません。
子ども自身が動かなくてはいけない状況
私が以前取材した大学生は、進学費用について悩んだ末、自分で実父に養育費の値上げ交渉をしたと話していました。忠孝さんも、養育費を値上げしてほしいと思っているのですが、実父にそれを伝えるのには逡巡があるようです。
「母親は直接話したくないらしく、代理人(弁護士)を通すことになると思うんですが、そうすると弁護士への報酬も発生する。それに公正証書で取り決めた額があるので、(増額は)断られたら終わりなんです。
今後(僕が)会うかどうか……。向こうからは連絡がないので、どうしていくかな、というところです」
最近は、同居親ではなく子ども本人が、養育費について支援機関に相談するケースも多いと聞きます。現在の制度が養育費の確保という経済的な子どもの権利を守れていないから、子ども自身が動かなくてはいけない状況を、ひとりの大人として申し訳なく感じます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら