「家族ってなんだろうって、ずっと考え続けてきたんです」
たまたま参加したあるワークショップで、こんなことを言う女性がいました。聞けば親の離婚と再婚を2度経験し、自身も離婚と再婚を経て、家族について考えることが多かったそう。
気になったのが「私は、妹の人生を背負っちゃったんです」という言葉でした。再婚でしか生きる道がなかった母親を困らせまいと、そして幼い妹を守ろうと生きてきたという彼女には、しかし「子ども時代の記憶が断片的にしかない」といいます。
彼女の家族に何が起きたのか? 子どもだった彼女は、何を感じてきたのか? 「おとなたちには、わからない。」シリーズ、今回は親の離婚や再婚のなかで「家族」を考えてきた、坂間葵さん(51・仮名)に話を聞かせてもらいました。
ひとりで家を出た母親
ある朝起きたら、母親がいない。それは、小学1年生が終わる頃でした。葵さんは、両親と妹と4人で暮らしていましたが、このとき父親から「もうお母さんは帰ってこないよ」と言われ、妹と3人で父親の会社の社宅に引っ越すことに。
社宅では、葵さんが学校に行くと、幼稚園にまだ通っていない3歳下の妹がひとりになってしまうため、よくずる休みをしました。先生が家に来ると「息をひそめて隠れていた」記憶が、うっすらとあるそう。
「この頃の記憶って断片的にしかないんです。ところどころ覚えている感じ。学校には行ったし、社宅の敷地内で遊んだり、ふつうに暮らしてはいたんですけれど」
2、3カ月ほど経ったとき、突然母親が現れます。その日は母と葵さんと妹の3人でデパートに行ったのですが、その後、母はまたひとりでどこかに帰ってしまいました。葵さんも妹もわけがわからず、ただ泣いたといいます。
後で母親から聞いたところによると、当時父親に「女の人」ができ、その人と暮らすため別れたいと言われたそう。母親は専業主婦だったため、まずは仕事や住む場所を見つけるため、ひとりで家を出ていたのでした。
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