日本を含む北東アジアで中長距離LCCの展開が進まなかったのは、大きなハードルが存在するため、とも言える。欧州へ飛ばす際に不可欠な「ロシア上空の通過許可」の取得という問題があるからだ。
CAPAのアナリストは、「もしこの足かせがなければ、たとえばジンエアーはとっくに欧州に行っているはずだ」と指摘。一方、かねて日本乗り入れへの意欲を口にしているノルウェージャンのビョルン・ショス最高経営責任者(CEO)は「(日本行き新路線の就航は)しかるべき飛行許可が得られるかどうかがポイント」といったコメントを述べている。ちなみに同社はすでにバンコクやシンガポールへの乗り入れを果たしている。
新会社の欧州乗り入れ先はバルセロナ?
しかし、その風穴を開ける動きが見え始めた。スペインとロシアとの航空交渉が進んでおり、今年2月にはスペインのインゴ・デラセルナ・エルナイス公共事業相が「シベリア上空経由でマドリード以外の国内地点とアジアとを結ぶ路線を設定することでロシアと合意した」と明らかにしている。
すでにマドリードと成田との間にはイベリア航空の直行便が飛んでいるが、政府間交渉が進展したことで、「レベルとノルウェージャンがバルセロナと成田を結ぶLCC便を早晩飛ばすのではないか?」という気の早い観測も流れ始めている。
ところがここへ来て、違った流れが出てきた。BAとイベリア航空を運営するIAGが「ノルウェージャンの完全子会社化に向けて買収案を提示したもよう」という報道が5月21日にスペイン紙に掲載された。
ノルウェージャンは中長距離便に運用可能なワイドボディ機を30機余り保有、これは欧州のLCC界では他社をまったく寄せ付けない圧倒的な規模となっている。しかしこの拡大戦略があだとなり、「バランスシートに不安がある」といった声が業界内部で幾度となく聞かれるようになってしまった。IAGは4月にノルウェージャンの少数株を手にしたのだが、わずか1カ月ちょっとの間に子会社化という方針を打ち出した格好である。
さて、「こんな欧州LCCの買収話がJALのLCC新会社とどういう関係があるの?」という疑問が湧いてくることだろう。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら