男たちを弄んだ「かぐや姫」が犯した本当の罪 謎だらけの竹取物語の根底には何があるのか

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かやうにて、御心を互ひに慰め給ふほどに、三年ばかりありて、春の初めより、かぐや姫、月の面白う出でたるを見て、常よりももの思ひたるさまなり。 ある人の、『月の顔見るは、忌むこと』と制しけれども、ともすれば、人間にも月を見ては、いみじく泣き給ふ。
【イザ流圧倒的意訳】
帝とかぐや姫が文通をはじめてから3年の月日が流れた頃だった。その年の春の初めから、美しい月が出ているのを見て、普段より落ち込むようになった。「月を見るのはよくないですよ」と言われても、人の目を盗んで月を眺めて物思いに沈み、よく涙を流した。

月の出番だ。かぐや姫のお迎えが来る日がどんどん近づいている。それを心待ちにしていたはずだが、一瞬おカネに目が眩んだ前科を持ちつつ、自分を大事に育ててくれた竹取の爺さん、ちょっと頼りない婆さん、結構ウザかったが今はしかるべき距離を保っている帝と会わなくなる寂しさが込み上げてくる……旅立ちの前にさまざまな感情が渦巻き、今まで見せていなかった優しい部分が浮き彫りになる。

とはいっても、時間が着々と進み、8月15日という期限まであとちょっとしかない。爺さんにその真実を打ち明けると、かなり取り乱し、帝と組んで何としてもかぐや姫を月の都の人たちから守ろうと一心不乱。

かぐや姫は羽衣を着けた途端…

翁の言ふやう、「御迎へに来む人をば、長き爪して眼をつかみつぶさむ。さが髪を取りてかなぐり落とさむ。さが尻をかき出でて、ここらの朝廷人(おほやけびと)に見せて、恥を見せむ」と腹立ち居る。
【イザ流圧倒的意訳】
爺さんが「迎えに来る連中は、長い爪で目玉をくり抜いて潰してやる。この手で髪をつかんで、空から引きずり落としてやる。そいつの尻をまくり出して、大勢来ている朝廷の兵士たちに見せて大恥を掻かせてやろうじゃないか!」と怒り狂いながら言った。

しかし、かぐや姫の予測どおり、何百人の兵士で臨んでも、天人に勝てる者はいない。雲に乗ってお迎えが来たときに、屋敷の周りに待ち構えた人たちがロボットのように操られ、戦うどころか、立つことすらできず、千鳥足で動く兵士たちの滑稽な姿は人間の無力さを物語っている。

爺さん、婆さんと帝との感動の別れがあり、それぞれに餞別の品を渡し、かぐや姫は天の羽衣を着て、この世から去っていく。月を見上げて私を思い出してほしいという言葉を残して月の都へ戻るが、彼女自身はもう羽衣を身に着けた瞬間に地球上で過ごした時間の記憶はすべて消えてしまう。

迎えに来た天人の話によると、かぐや姫がこの世に送られたのは罪を償うためなのだという。しかし、その肝心な罪について一切書かれていない。それがこの物語の最も深い謎の部分だが、解明しようとする説がたくさんある。

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