男たちを弄んだ「かぐや姫」が犯した本当の罪 謎だらけの竹取物語の根底には何があるのか

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「許さじとす。」とて、ゐておはしまさむとするに、かぐや姫答へて奏す、 「おのが身は、この国に生まれて侍らばこそ使ひ給はめ、いとゐておはしましがたくや侍らむ」と奏す。帝、「などかさあらむ。なほゐておはしまさむ」とて、御輿を寄せ給ふに、このかぐや姫、きと影になりぬ。
【イザ流圧倒的意訳】
「もう放したりしないぞ」と帝が声をあげて言い、連れ出そうとする。それに対してかぐや姫は「私がこの国の人だったらきっと帝の思いどおりになっていたでしょうけれど、残念ながら違うので、連れ出すのは無理だと思いますけど」とあっさり答える。
「何を言っているの! どんなことがあっても連れ出してみせるぞ」と意気込んで輿を呼び寄せると、かぐや姫が突然ぱっと消えた。

かぐや姫もまた試されていた

古代貴族の男女関係では「見る」ことは特別な意味を持っており、「異性と関係を持つ」という意を示す。深い関係になるまで、男女はお互いの顔が見られなかったことを物語る表現だ。その文脈を考慮すると、帝の行動はいかに強引かがわかる。お断りしているかぐや姫の意志を完全に無視して襲っているわけで、決して褒められたことではない。

用心深いかぐや姫でも姿を見られてしまうが、自分を守るために、素早く的確な判断を行い、この世ではない何かに変身する。すばらしい頭の回転の速さ!『源氏物語』をはじめ、男どもが勝手に部屋に上がり込んで不本意に関係を強いられた女性が数多く描かれている平安時代の想像力の世界の中で、このようなずば抜けたサバイバル能力を持っている人物は中々いない。よくやったとエールを送りたくなる瞬間だ。

見事に危険から自分の身を守ることに成功したかぐや姫は元の姿に戻る。これ以上怒らせないほうが無難という判断のもとなのかもしれないが、帝と文通を始めて、安全な距離を保ちつつ何事もなかったかのように自分の生活を続ける。

彼女は男どもに試練を与える側という設定になっているが、裏返すと彼女自身が最初から試されているという見方もできる。うそを見抜けるかどうか、うまく決断ができるかどうか、自分の考えを行動に移せるかどうか……。

いろいろな危険を乗り越えてきて、危うくだまされそうな瞬間が何度かあるが、ようやくかぐや姫は理想の女に成長する。そして、この世で得られる知識をすべて学び、立派なレディになったからこそ、いよいよ本来属する世界に戻らないといけない。

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