星野リゾートの社内はなぜ風通しがいいのか 社員が自律的に動ける組織が持つ5つの特徴
4.将来のキャリアパスを自由に描ける
星野リゾートでは、総支配人やユニットディレクターなどの管理職は、立候補によって決まる。やる気のある人がマネジメントに挑戦できる仕組みが整えられているのである。一方で、マネジメントから降りることも自由だ。マネジメントを経験した人が、興味関心の変化や、個人や家庭の事情などでマネジメントから離れ、重責の伴わない現場に戻る選択も可能なのである。星野リゾートでは、役職に就くことを「出世」ではなく「発散」、役職から外れることを「降格」ではなく「充電」と呼ぶ。
社員がライフステージに合わせて自由にキャリアを設計できるのは、年功序列によらない給与体系であることも理由の1つだと星野代表は話す。「私たちが採用するのは、仕事に見合った給料を支払う給与体系です。勤続年数に関係なく、仕事の価値に対して給料を支払うので、会社として採算が合わないということがありません」。立候補制度の導入により、社員にキャリア設計の自由が与えられるのみならず、マネジメント層の入れ替わりを促し、組織の活性化にもつながっているのである。
社員を放ったらかしにはしない
5.自律するためのスキル習得の機会がある
発言したり行動したりする自由や、マネジメントに挑戦できる自由が与えられていても、それを実行するためのスキルが不足していれば、自由を謳歌できない。結局、上司に頼らざるをえないか、むしろ上司の指示に従っていたほうが楽だろう。フラットな組織文化で主体的に動くためには、相手を説得できるだけの論理的思考、プレゼンテーション能力、意思疎通のためのコミュニケーション能力、議論を導くファシリテーション能力など、さまざまなスキルが求められるのだ。
社員が好きに動ける環境はあっても、個人の努力や能力に任せきりにする企業が多いなか、星野リゾートでは社員を放ったらかしにはしない。社内ビジネススクール「麓村塾」を通して、上司の指示に頼らず主体的に動くためのスキル習得の機会を社員に提供している。社員1人ひとりに発言や行動の自由を与えると同時に、学びの場を通して社員の自律的な働き方をサポートする。これも社員が自分の能力を存分に発揮し、生き生きと楽しく働くためには大切なことである。
上記に挙げた「フラットな組織文化」の5つの特徴は、「生命体的組織」「個人の自律分散型組織」とも呼ばれるティール組織の条件と近しい。
社員のモチベーションや能力を企業の原動力として機能している点も一緒だ。
先述した新業態「星野リゾート OMO」では、ホテルスタッフが「ご近所専隊 OMOレンジャー」と名付けた案内役を務める。色違いのユニホームを着用し、徒歩圏内でガイド本に載ってないような穴場の飲食店や、名物ママのいるスナック、エンターテインメントなどを案内するという。社員が自ら考えて動く会社でなければ、思いつきもしないサービスであろう。
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