星野リゾートの社内はなぜ風通しがいいのか 社員が自律的に動ける組織が持つ5つの特徴
1914年に軽井沢で創業した星野リゾートは、4代目経営者・星野佳路代表が運営に特化した経営方針を打ち出し、全国展開するリゾート運営会社へと成長を遂げた。
ラグジュアリーリゾート「星のや」や、温泉旅館ブランド「界」など、国内外にさまざまな業態の旅館を出店。今年4月に都市観光ホテル「星野リゾート OMO7 旭川」を開業、5月に「星野リゾート OMO5 東京大塚」をオープンした。
この躍進を支えているのが、今や星野リゾートの代名詞ともいえる「フラットな組織文化」である。上司と部下の間の主従関係は存在せず、ピラミッド型組織にありがちなポジション争いや足の引っ張り合いもない。ホテルや旅館の総支配人などの管理職は立候補によって決まり、人事評価は業績ではなくプロセス重視で公平に行われる。現場はトップに“お伺い”を立てなくても、自分たちで意思決定することができる。社員が自分の能力を存分に発揮し、生き生きと働ける環境があるのだ。
筆者は過去数年間にわたり、星野リゾートの競争力の源泉であるフラットな組織と、そこで働く社員の活躍を取材してきた。社員の主体性とやる気を引き出し、企業の競争力につなげられる組織とはどのようなものなのか。拙著『トップも知らない星野リゾート~「フラットな組織文化」で社員が勝手に動き出す』でも詳しく解説している、日本版ティール組織ともいえる星野リゾートの「フラットな組織文化」の一端を紹介したい。
自由に発想したことを提案し、行動に移せる
1.上からの指示に頼らない
世界のホテルチェーンと星野リゾートの決定的な違いは、前者が本社や本部主導による均一のサービス品質を保証しているのに対し、後者は現場主導で各地域の魅力を反映させたサービスを提供していることだ。そのため、同じ星野リゾートの施設であっても、コンセプトやサービス内容、滞在の楽しさはさまざまである。現地主導のスタイルを採用するのは、地域の魅力はそこに暮らすスタッフがもっともよく知っていると考えるからだ。
現場に多くの自由が与えられているだけではない。現場レベルでも、スタッフは上司の指示を待つことなく、自由に発想したことを提案し、行動に移せる。実際に現場スタッフの自由な発想から生まれた人気プログラムには、奥入瀬渓流ホテルの「苔さんぽ」やトマムの「雲海テラス」、軽井沢ホテルブレストンコートの「マイ・マルシェ・ウエディング」などがある。その土地でしか体験できないユニークなサービスの数々が、星野リゾートの競争力を高めている。
「誰かの言うことや、誰かの指示に頼らないのが私たちの組織です。トップの言うとおりにすれば評価されるのではなく、顧客満足が高まることに取り組まなければ自分たちの評価にはつながらない。顧客の満足につながると自分たちが信じることをやるしかないのです」(星野代表)
無料会員登録はこちら
ログインはこちら