「AI」だけでは未来は創れないといえる理由

技術が進歩しても敵わない人間だけの能力

人間にできてAI(artificial intelligence:人工知能)にできないこととは何でしょうか(写真:metamorworks / PIXTA)

AIは万能ではない――この考え方を筆者は大前提としている。

AIについて書く前に、簡単に筆者の紹介させてほしい。私は今から17年前に新卒で米国投資銀行に入社し、トレーダーという仕事でキャリアをスタートさせた。

2000年代初頭の当時は、業界全体でトレーダーの仕事を自動化するためのシステム開発に乗り出していた時期であったが、当時のシステムは、まだまだAIと呼べるレベルの代物ではなかった。実際、自動売買システムは、トレーダーのアシスタント的存在で、重要な取引は「人間の」トレーダーが行っていた。

その後、システムに本格的にAIが組み込まれ始め、パフォーマンス的にも人間を凌駕するようになっていった。実際、2008年時点では、多くの自動売買システムにAIが組み込まれていたと考えられる。

にもかかわらず、多くの証券会社が2008年9月に端を発したリーマンショックで巨額損失を出した。それはなぜか? そこにAIの弱点を理解する鍵があると筆者は考えている。

AIの最大の弱点は何か?

AIの定義によっては一部例外があるにせよ、基本的にAIは「過去のデータ」を基に分析を行い、学習をすることで、判断や未来予測を行うことに大きな特徴がある。

しかし、この「過去のデータを基に学習していること」がAIの最大の弱点である。

すなわち、

①過去に起こったことがない事象に対しては、「学習」していないので「判断」できない
②過去と未来の相関が低く、「再現性」が低い事象に対しては「未来予測」できない

ということである。

特に、リーマンショックでは①の弱点が露呈した。過去にリーマンショック以上の金融ショックがなく、AIは対処法を学習しておらず、どうして良いか判断できなかったためだ。

また②についても、AIと金融市場は元々の性質上、それほど相性が良くないという点がある。たとえば、アマゾンで買い物をした場合、AIがあなたの好みを次々に学習して、商品をレコメンドしてくれる。個人の「好み」は急に変化しないので、過去に好きだったものと、未来に好きなものの「特徴量」の相関が高く、「再現性」が高いためAIが機能しやすい。

次ページ株式市場では再現性が高いとはいえない
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