「AI」だけでは未来は創れないといえる理由 技術が進歩しても敵わない人間だけの能力

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もう少し身近な例で説明すると、

人間は生まれつき「時間を無駄にしたくない欲求」を持っている。その欲求を持っている人が駅の改札に行った時に、「いちいち切符を買いたくない」というニーズが発生する。

自動改札とSuicaは瞬く間に普及しました(写真:iStock/emiekayama)

そこに「カードにお金をチャージでき、改札口でタッチするだけで支払える」という技術が組み合わさって初めて「Suica」というサービスが生まれ、また1つ人々の欲求を満たす「より良い未来」が創られたことになる。
世界は、このような小さな革新の積み上げで出来上がっているといえる。

ここでのポイントは、すべての革新の始まりが「人間の欲求」である点だ。
日々のさまざまな生活シーンの中で、人はさまざまな「潜在的な困りごと」に遭遇する。

ここでの「困りごと」とは、「欲求が満たされない状態」の総称である。さらに、あえて「潜在的な」と表現しているのは、多くの場合、それは欲求が満たされていないにもかかわらず、解決することを諦めていて、当の本人は「困りごと」として言語化すらできないことが多いからである。

先ほどの例で言うと、何十年間にもわたって「駅で切符を買う」という体験を繰り返していると、それが「あたりまえ」となり、「時間を無駄にしたくない欲求」が阻害されているということすら気づかない。

欲求を持つ人間だからこそ可能なこと

重要なのは、もう一度「人間の欲求」だけにフォーカスし、ゼロベースで新しい体験をデザインすることである。これは、現在と過去の行動データしか分析できず、「欲求」を持たないAIには不可能である。

これに関しては、欲求をデータ化して学習すれば可能になるのではと考える人もいるだろう。だが、上述の通り、重要な革新の多くは本人も認識していない潜在的欲求に由来するので、いくら自然言語等の解析技術が進んでも相変わらずAIには困難なはずである。

そう考えると、人間にしかできない、「人間らしい」こととは何だろうか? そこで、求められるのは”共感力”だと筆者は考えている。

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