「寝てない自慢」をする人を襲う健康リスク 「忙しいの、慣れちゃったよ」は脳の故障だ

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

その結果、

「早出と遅出のシフトが1週間ごとに入れ代わるシフト勤務についている人の場合、睡眠や食事の時間が7時間ほどズレが生じるのに対し、体内時計の変化は2時間程度」

だったことがわかったのである。

生活リズムと体内時計のずれは、慢性的な時差ぼけを経験しているのと同じ。内臓は“就寝時間”になっているのに、無理に働くと身体がダメージを受ける。それが引き金となり、高血圧、睡眠障害、精神疾患、心臓病などを発症するリスクを高める。

体内時計のずれの影響は、若者ほど受けやすい

しかも体内時計のずれの影響は、若者ほど受けやすい。

子どもから大人に向かう途中では、成長ホルモンなどの影響で「時計遺伝子」と誤差が生じるため10代の子どもたちは、夜遅くまで眠れない傾向が強まる。だが、その状態をゲームや受験勉強などでさらに加速させると、不安感やストレスに加え、成績の低下、高校や大学の中退率を高めるという、研究報告が相次いでいるのである。

就寝時間が22時以降、睡眠時間が7時間未満の場合、心身への負担は1時間睡眠時間が減るごとに14%程度高まるとの報告もある。

『残念な職場――53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

ただでさえ日本人の睡眠時間は世界一短く、平均睡眠時間は7時間24分。世界一たくさん寝ているのはオランダで8時間21分、欧米は軒並み8時間前後だ。加えて「遅寝、早起き」であることが判明している(米ミシガン大学が100カ国の数千人以上の就寝時刻や起床時刻のデータを収集・比較した結果)。

人は想像以上に弱く、想像以上に強い。この二面性が複雑に絡まり合いながら、私たちは社会的な動物として、環境に“適応”する。

大人が「睡眠」をおろそかにし、強さの証とすれば、それが社会的なプレッシャーになり、子どもたちの睡眠時間の減少にもつながっていく。

だからこそ、長時間労働は絶対悪。絶対に許してはダメだ。自分のためだけでなく、子どもたちの未来のためにも過労死や過労自殺という言葉は、死語にしないとダメなのである。

河合 薫 健康社会学者・博士、気象予報士

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

かわい かおる / Kaoru Kawai

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。「人の働き方は環境がつくる」をテーマに学術研究にかかわるとともに、講演や執筆活動を行っている。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。2018年4月に、無責任な上司、仕事と家庭の両立、長時間労働などの職場の問題を考える『残念な職場』(PHP新書)を刊行。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事