筆者も含めて、戦略系から自信満々で事業法人に出たチビッコが、最初に自分のできなさに衝撃を受けることはたくさんあります。
戦略系少年少女は普通の「会社」では当たり前の、契約書も読んだことない、押印もしたことない、税務署に行ったこともない、もちろんM&Aも「やれやれ」言うだけでやったことない。いかに自分たちが「やれやれ詐欺」だったかを知ることになります。外に出ていったん謙虚になって、今までに培った地頭とロジックをフルに使って、社長に「やっといて」と言われたストックオプションを、適格税制にするために要件を充足して設計できるようになるかがイシューです。
質問者の方が、それなりに企業経営の本質に迫って生きていきたいと思われるなら、今すぐ、何でも自分でやらないといけない環境に行くべきです。そういう意味で②は中途半端です。すると結論は③になります。少しでも、戦略系も疲れたな、でも投資銀行はもっと悲惨だし、外資系製薬会社のマーケとかなら給与水準落とさないでいけるかな――という気持ちがあるのであれば、やめたほうがいいです。
ベンチャーは雑用が8割
②のような上場企業でベンチャーと大人たちから呼ばれるようなところに行ったり、中途半端に出来上がったところに行って、出来上がった派閥抗争に参加したりせずに、今から成長する50人以下の会社で「経営企画」という呼称の、営業から財務から人事から総務からお酒の買い出しまでやったほうがいいです。「本質的なマネジメント力」を若いうちにつけるのであれば、それがいちばんの近道です。
これはキャラの問題もありますので、質問者の方が、「事業企画しかやりません、僕の業務範囲はここまで」という人ではなく、「この会社を一流にするのは僕だから、僕がやんなきゃ、逃げちゃダメだ」と主たる業務を領空侵犯してできるかが分岐点です。ベンチャーは雑用が8割ですので、「戦略(笑)」は寝る間を惜しんで考えるしかありません。
いったん整理いたしますと、質問者の方が「35歳でどうなっていたいか?」を考えてはいかがでしょうか? 普通のキャリアチェンジとしては世間的にはラストチャンスです。35歳でプロフェッショナルであれば、どこかの業界で名前が聞こえているべきですし、どこかの会社に欲しがられているべきです。リファレンスを取られて、「彼はやばいよ、超グリーディでさ」と言われるならまだしも、「そんな人、知らないなぁ、ウチにいたの? うーん使える人なら知ってるんだけどな」と言われるのは哀しいものです。
質問者の方は、次は名刺代わりの案件を手掛ける気概を持ちましょう。さかなクンさんにとってのクニマスのような案件です。今のファームで不遇だとしても、後年、成功すれば講演に呼んでくれます。人とは違っても、どこかで成功すればいいはずです。「人皆は 萩を秋と言ふ よし我れは 尾花が末を 秋とは言はむ」でいきましょう。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら