「大豆農家」がトランプ政権の命運を左右する 米中貿易摩擦の最大焦点に大豆が浮上
米国と中国の貿易戦争が、本当に起こるのかどうかは分からない。ころころ変わるトランプ大統領の「次の手」が読み切れないからだ。しかし、貿易戦争に突入した場合、はっきりしていることが1つある。多くの農家が、この秋の中間選挙でトランプ政権と共和党に反旗を翻すことだ。
米中の貿易摩擦で最大の焦点は大豆だ。たかが豆腐や納豆の原料と思うなかれ。中国は輸入した大豆を搾り、急増する食用油原料、家畜飼料に欠かせない大豆ミール需要に振り向ける。
輸出の恩恵を受ける農家は30万人
米国の2017年の対中輸出額は1300億ドル余り。「航空機・部品」が162億ドルで最大だが、大豆が大半を占める「穀類」は137億ドルで2位に付ける。この年に航空機輸出が増えたのは、ボーイング社が202機の対中輸出に成功したからで、2016年には「穀類」が第1位だった。
大豆輸出の恩恵を受ける農家の数は、中西部を中心にして30万人に及ぶ。一方で航空機の直接の恩恵を受けるのはボーイング社など数社に限られる。米国にとって大豆は、最も重要な対中輸出商品だ。
中国は1990年代半ばまで大豆輸出国だった。その後、国内生産量は停滞し、一方で需要はうなぎ登り。年々輸入量が増え続け、約1億トンの大豆を世界からかき集めるようになった。ブラジルからが5割で、米国産は4割を占める。
中国政府は4月4日、米国が対中制裁の品目案を公表したことへの報復として、米国産大豆に25%の関税を上乗せすると発表した。
米パデュー大学の研究チームが3月末、米中貿易戦争による米国産大豆輸出への影響を試算した。「中国が関税を30%上乗せした場合、対中輸出は70%減る可能性がある」というものだ。実際には25%上乗せが発表されたが、同大学のワリー・タイナー教授は筆者の質問に「25%の場合も30%とほぼ同様の大幅な打撃が見込まれる」と答えている。
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