「大豆農家」がトランプ政権の命運を左右する 米中貿易摩擦の最大焦点に大豆が浮上

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しかし、トランプ政権が中国との貿易戦争を選んだ場合、農家とトランプ氏の蜜月関係にひびが入るのは確実だ。米国の農家は過去3年間、穀物や大豆価格の下落に直面している。「農家はそれ以前の高価格時の蓄えでやりくりしている」(アンダーソン教授)。さらに価格が下がれば、信頼感が揺らぐのは避けられない。

11月の中間選挙に危機感

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは4月12日付(電子版)で「トランプ政権が農家救済検討、対中貿易戦争に備え」と報じた。貿易戦争で農家に影響が及べば、数十億ドル規模の救済策を政権として導入する方針だという。

「貿易問題で打撃を受ける農家を補助金で支援」というのは日本でも見慣れた風景だが、米国の農業団体は怒りを隠さない。同紙によると、最大手の米農業連合会などは、首都ワシントンやトランプ氏の別荘があるフロリダ州パームビーチ周辺で65万ドルを投じ、貿易戦争に反対するテレビ広告を流している。

広告元の団体は4月12日に「農家が必要なのは、(メキシコに次ぐ)第2の輸出市場(中国)の持続的な市場アクセスだ。打撃緩和策では長期にわたる市場喪失の埋め合わせにならない」との声明を出した。

11月の中間選挙を控え、中西部を地盤とする共和党議員の間にもトランプ政権の中国強硬策への危機感が高まっている。4月18日付のニューヨークタイムズ紙は「中西部の農家が共和党にトランプ通商政策で警告」と題した記事を掲載した。農家のトランプ離れ傾向があちこちで始まった。共和党の金城湯池である中西部で、民主党が巻き返しの攻勢に出ているのだ。

怒れる大豆農家が米国の国内政治の行方まで左右する可能性が出てきた。

山田 優 農業ジャーナリスト

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やまだ まさる / Masaru Yamada

日本農業新聞を経て、農業ジャーナリスト。

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