「赤身肉ブーム」から広がる和牛生産の新境地 役割を終えた経産牛が人気を集めているワケ

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アルファベットのAが示しているのは、歩留まりのことで、皮や内臓を取り去った枝肉からどれだけ商品になる生肉が取れるかを示します。72%以上がAランク、69以上72%未満がBランク、69%未満がCランクとなります。

数字の1〜5は、霜降りの具合、肉の色、肉の締まりとキメ、脂肪の色沢と質を総合的に判断したもので、5が最高ランク。でも、これは全部市場の検査官が目視で評価するもので、あくまで流通の目安であって、味の評価ではないのです。とはいえ、A5やA4がおいしいことが多いのは確かではあります。

サシの多い、霜降り和牛(写真:ミヤヒロ / PIXTA)

サシが多い=霜降りほど和牛はおいしい! この目標に向かって、ここ30〜40年の生産者の努力は目覚しいものがあります。実際、現在市場で取引される牛の約8割が霜降り肉の4、5等級のもので、多いものでは脂肪含有量が6割を超えます。昭和の頃は、4、5等級の牛は3分の1くらいしかいなかったそうなので、肥育の技の向上はすばらしいと思います。

実は和牛が食べている飼料のほとんどは輸入品

牛は、サシが多く体が大きいほど高く売れるので(お肉の値段は、「重量」×「単価」)、生産者はそれを目指して今まで育ててきました。牛を大きく育て、霜が降るようにするためには、トウモロコシや大麦などのたんぱく質や炭水化物、脂肪などがたくさん含まれる「濃厚飼料」を与えます。

その飼料のほとんどが輸入ものというのが実は現実です。日本生まれ、日本育ちの和牛ですが、食べているものは外国産なのです。とはいえ、費用のことを考えると仕方がないのかもしれませんが……。

こうした中、従来とはひと味違う但馬牛の繁殖を担う農家があります。冬には雪で覆われる兵庫県の山間部、美方郡香美町にある田中畜産がそれです。和牛なので、霜降りのお肉と思うかもしれませんが、田中畜産の牛は、違います。そこそこのサシが入った赤身肉です。

田中畜産は、但馬牛の繁殖農家で、子牛を出荷する生産者。子牛を出荷するということは、当然母親もいるわけですが、母牛はいつまでも子牛を受けるわけではなく、たいてい10年ほどで母牛としての役割を終えます。

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