家造りから「大工」が消える?効率化の光と影

木造住宅の変化で人知れず消える技術と道具

活況を呈するプレカット市場の背景には、木造住宅の工法の変化がある。かつては柱やはりを組み、筋交いを入れることで骨組みを作る昔ながらの在来工法が主流だった。

だが1970年代から、コストと工期を圧縮し、住宅を大量に供給するための手法として、柱の代わりに壁で家を支える2×4(ツーバイフォー)やプレハブ工法が主流になっていった。

ポラテックの坂東工場も、1982年の開設当時は自社施工の住宅向けに木材を加工する工場にすぎなかった。だが新工法の普及を受けてプレカットは大手ハウスメーカーから地場の工務店まで引っ張りだこになり、現在工場で製造する部材の9割は外部に出荷されている。今ではポラテックを柱とするポラスグループ全体でのプレカット事業の売上高は20年前からおよそ10倍にまで成長した。

プレカットの隆盛とは対照的に、在来工法の担い手であった大工を取り巻く環境には、大きな変化が起きている。

もはや「大工」ではない?

「このところ、大工の腕が相当落ちてきている」――。

横浜市の工務店、森の恵(めぐみ)を営む松永賢司社長は、最近の大工事情を苦々しく語る。腕とは、まっさらな木材に自分で目印をつけ、手作業で加工する技術で、それぞれ「墨付け」や「刻み」などと呼ばれる。寸分の狂いもなく加工するためには、家の完成予想図や木材の特性、部材の役割などを隈無く頭に入れておく必要がある。

「和室を作るのにも大工の高い技術が必要だ」と語る松永賢司・森の恵社長(記者撮影)

一方、プレカットなら現場での作業は部材を組み立てるだけ。現場で木材を逐一加工する必要がなくなることは、裏を返せば墨付けや刻みといった在来工法の技術を身に付ける必要もなくなる。

森の恵は6人の大工を抱えているが、建築や改築はすべて手作業で行っている。松永社長によれば、ほとんどの工務店では出来合いの部材を組み立てる仕事が主流だそうだ。「そうした仕事が、はたして“大工”と呼べるのか。大工とは何なのか、という話になってくる」(松永氏)。

大工への逆風はプレカットの普及以外にもあるようだ。

東京都内でドアや襖(ふすま)などの建具を手掛ける岩木屋木工(江東区)の岩木昇代表は「大工は木材の加工や組み立て以外にも、ボードを貼ったり内装を加工したりと家のことなら何でもできた。自分も昔は鉄筋だって組んだこともある。でも今は『床は床屋』、『天井は天井屋』と仕事が細分化された。新築なら、もはや大工の出番はないだろう」と話す。

木造住宅のことなら何でもお任せという器用さが、今では「器用貧乏」になりつつある。

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