世界経済と国際政治の中心都市ニューヨーク。世界中の人たちが集い暮らすグローバル社会の最前線とも言えるような場所で、手作りバッグブランド「oktak」デザイナーの高田亜樹さんは、10年以上にわたって子育てに励む。
高田さんは、中学2年生までの間に米国と英国で通算10年を過ごした帰国子女。国連職員である夫と結婚したときは、英国で大学院生活を送っていた。大学院の休暇中に夫の当時の赴任先だったアンゴラに数カ月間滞在、そこで貧困・紛争・劣悪な衛生状況の中での暮らしに触れて世界観が変わったという。
出産後はしばらく子育てに専念していたが、一念発起してデザインを学び、バッグデザイナーとして起業した。
ライフイベントに応じて生業を変えながら、しなやかに世界を渡り歩いてきた高田さん。そんな彼女が子どもたちに願うのは、「世界中どこでも生きていけるたくましさと柔軟性、知性とやさしさを身に付けてほしい」ということだ。
高田さんのこうした子育て観は、ニューヨークという都市が持つ多様性と切っても切り離せない。
多様性の理解は、死活問題
ニューヨーク市は人口約830万人。このうち、白人が約45%、黒人とヒスパニックでそれぞれ25%前後、アジア系が10%弱という構成になっている。家庭で英語以外の言語を話す人は、全体の半数弱にものぼる。人種や民族といった「目に見える多様性」だけでなく、宗教、家族の形態、所得水準、性的指向や性的アイデンティティ、障害の有無といった「目に見えない多様性」にも富む。
とはいえ、人々が均等に混じり合い、調和しているいわゆる「メルティングポット(るつぼ)」では決してない。実際には、人種・民族・国籍による地域的な「住み分け」があり、それは往々にして所得水準や地域のインフラ整備の度合い、治安、子どもの学力格差として現れている。均等な社会ではないからこそ、学校、職場、地域など、社会のあらゆる場面で「多様性の尊重」が重視されるわけだ。
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