ワークライフバランスの取りづらい日本社会を観察しながら高田さんがもうひとつ気になっているのは、人生の成功の物差しが狭いことだという。会社員としての安定的な終身雇用と引き換えに、組織への従属を求められて長時間労働になりがちなのは、そうではない働き方や生き方が、日本社会では「成功」とは見なされないことの裏返しでもあるだろう。
高田さんは言う。「日本では“就活自殺”まで出ていると聞きます。大卒でもいろいろな道があることを知っていたら、自殺したりはしないのではないでしょうか。起業したって、放浪したっていい。道はひとつではないということは、私のキャリアを通じて子どもたちに伝わっていると思います」。
人生の成功の物差しを広げる――。今までにない職種やキャリアが生まれると予測されるグローバル化時代にあって、どんな道にも踏み出せるチャレンジ精神を育もうと努めるのも、親の役割だと思わずにはいられない。
結局、グローバル教育って?
今秋でインターナショナルスクールの中学校最終学年を迎えた息子さんは、理系に強い公立高校への進学を目指している。将来は動物学者になるという夢を持っていて、今夏はブロンクス動物園でインターンを経験したそうだ。バレエに打ち込む9歳の娘さんも、そのまま公立高校へ進ませるつもりだという。
「米国の大学は学費が高すぎるので、最近ではカナダの大学への人気が高まっています。コストパフォーマンスを考えれば、修士・博士課程で米国の大学に行けばいいと思っています。世界中から専門性を持った人が集まるという点にこそ、米国の大学のよさがありますから」(高田さん)。
グローバル人材へのニーズの高まりに呼応して、海外への大学進学が選択肢のひとつとして浮上しつつある昨今だが、それが目的化してしまってはいないだろうか。興味のあることを極める、そのためのチャレンジ精神を育むといった土台があって初めて、グローバルに学び、働く可能性が開けてくるのだろう。
自身も国内外で教育を受け、グローバル社会の縮図のような場所で子育てを続ける高田さんにとって、「グローバル」「グローバル教育」という言葉は何を意味するのか。
「グローブとはそもそも地球ですよね。国際問題や他国の事情に精通するだけではなく、地球をシェアするすべての人々や、環境の多様性を認識したうえで、それを尊重し、自分の立ち位置を見つけて生きることこそが、グローバルに生きることだと思います。日本で生まれ育ち、日本で生き続けることを選択しても、グローバルな意識を持つことはできるはずです」(高田さん)。
「考えれば考えるほど、“グローバルな教育”ということを意識して特別なことをしたことがありません」という高田さん。でも、彼女の言葉の数々は、グローバル教育とは人間教育の積み重ねにほかならないということを気づかせてくれる。
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