映画鑑賞会にせよ読み聞かせにせよ、一家だんらんの何気ない営みではある。でも、高田さんのやり方を見ていると、こうした時間の蓄積が案外大切なのではないかと思えてくる。「子どもたちには、好きなことを極めてほしい。子どもたちはみんなそれぞれいいものを持っている。その芽をどう育てるか。読み聞かせは小学生になるとやめてしまう人が多いようですが、もったいないなあと思いますね」(高田さん)。
「他者への共感」をどうやって学ぶ?
多様性あふれるグローバル社会で平和裏に物事を進めるためには、他者への「共感能力」を磨くことが不可欠だ。高田さんのお子さんたちは、日常的なボランティア活動やチャリティ活動を通じて、さまざまな理由から困難な状況にある世界の人々に共感することを学んでいる。
たとえば息子さんは、大きな容器に入った水を運びながら寄付を募り、水道のない環境で暮らす途上国の人たちの水アクセスの問題を考える「ボトルラン」というイベントに参加したことがある。そこでの収益は、途上国で井戸を掘るための費用として寄付されたという。
「東日本大震災の際、娘の通う公立小学校では、大震災発生2日後には児童たちが自発的にベークセール(クッキーやケーキをつくって売り、その収益を何かのために寄付すること)の準備を始めていて、それを見たときはとても感動しました。寄付する側とされる側の双方がハッピーになれるようなやり方に、子どもたちは学校でも地域でも慣れ親しんでいるのです」(高田さん)。
日本人よ、夜7時には家に帰ろう
家庭では子どもたちの興味を伸ばすよう親がかかわり、子どもたちがさまざまな社会問題を知って行動する機会を地域社会が提供する――。こうした環境を作るためには、何より大人たちが子どもたちに時間を割けられるように、ワークライフバランスが大切になってくるだろう。高田さんも「夜7時ぐらいには家に帰って、子どもたちと一緒に夕飯を食べられるようになるだけで、全然、違ってくるはず」と訴える。
育児期の親の絶対的な労働時間を減らすだけでなく、男女ともに柔軟な勤務形態を取れる仕組みも大切だと、高田さんは力説する。
「わが家の場合、私が在宅で育児に専念していたにもかかわらず、2人目を出産した際、夫は育休を取りました。それも、全日の休みを数週間取るのではなく、3カ月間、午後3時に帰宅する方法を選んだのです。
当時、上の子は5歳で、キンダーガーテン(日本で言うと幼稚園年長)に入学したばかり。午後3時に学校が終わるので、夫は職場から学校に直行し、息子を迎えに行ってから帰宅しました。このようにフレキシブルに育児休暇が取れる仕組み、また父親も育休を取って当然という認識が、日本にもあればと思いますね」(高田さん)。
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