「どんな人にも敬意を払い、オープンマインドを持って接すること。地球上のどこにいても、持って生まれた能力を最大限に発揮すべく努力することは、私たちのような環境にある者にとっては“死活問題”です。日常のすべての選択が、無意識にその目標に向けて行われているのかもしれませんね」
こう聞くと、かの地での日々の子育ては緊張感に満ちたものなのではないかと思わず想像してしまう。でも「実は、特別なことをしているわけではないのです」と、高田さんは言い切る。実際、私たち一人ひとりがちょっとした遊び心を持って家庭や地域社会でできそうなことばかりだ。
「映画鑑賞」と「読み聞かせ」をする理由
高田さんは、子どもたちが何かに興味を持ち出したと感じたら、まずは何らかのかたちでそれらに関する情報を与えるよう心掛けているという。高田家はオンラインDVDレンタル・映像ストリーミング配信のネットフリックスの会員で、月10ドルの会費で良質なテレビドキュメンタリーや映画が見られる。これを使って、家族そろってご飯を食べながらひとつの作品を一緒に見る「映画鑑賞の夕べ」をほぼ毎週末やっている。
国連とのかかわりが長い高田家らしいのは、親が作品を提案する際に、時にさまざまな国の事情や人々の生きざまに触れられるものを選ぶということ。最近鑑賞したのは、ジンバブエのムガベ大統領独裁政権下での人々の暮らしぶりに迫った『Mugabe and the White African』(2010年作品) や、内戦下のウガンダで親を殺された孤児らが音楽やダンスを通じて生きる希望を取り戻していく過程を描いた『War Dance』(2007年作品) など。
一緒に観ていると「どうして戦争をするのか」「なぜ子どもたちがひどい目に遭わなければならないのか」といった質問が上がり、議論に発展する。「こうしたやり取りをすることで、時に残酷に見える内容も、残酷な印象だけ残さずに済むと思うのです」と高田さんは言う。
読み聞かせも、子どもたちの興味をとらえて伸ばす貴重な機会、と高田さんは考えている。すでに13歳の息子さんは読み聞かせを卒業してしまったが、9歳の娘さんには今でも寝る前の30分ほどの間、読み聞かせをしている。
今、読んでいるのは、日本でもかつて放映されたテレビドラマ『大草原の小さな家』の英語版原作。西部開拓時代に白人の一家が西へ向かって移住していく話だが、途中インディアンとの接触があって、偏見に満ちたローラの母親のエピソードが出てくる。
「ここで娘は『これってひどいよね』と言うので、そこから娘との対話が始まるんですね。娘はこの小説の時代を生きていないので、そのような疑問が出るのかもしれませんが、時代背景を踏まえたうえで、たとえばこの作品がインディアンの人たちの立場から書かれたらどうなるだろうね、などと話すのです。相手の立場になって考える機会、練習にもなります」(高田さん)。
ほかにも、長い夏休みには美術館や博物館のワークショップに積極的に連れて行き、興味のあることを深める機会に触れさせているという。
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