原料高騰で業界危機! 経営統合決めた明治製菓”チョコレート改革”進行中
来春、国内4位の食品会社が誕生する。9月11日、明治乳業と明治製菓が経営統合を発表。その席で、佐藤尚忠・明治製菓社長(新会社社長にも就任予定)は「世界的食品メーカーへの飛躍」を宣言した。菓子業界は今、カカオ豆をはじめ、過去例を見ない原料急騰に見舞われている。業界内では悲壮感すら漂う中、明治製菓が最大手の意地を見せた。「チョコレートの明治」は「世界のMEIJI」へ羽ばたくことができるか。足場固めは、本業のチョコレート製造現場で始まっていた。
製造時間を大幅短縮 成果を上げる「MPS」
埼玉県坂出市の関東工場。約3万坪の広大な敷地に、チョコレート、ガム、ビスケットなどの製造棟が並ぶ。原料高騰が本格化する直前の2005年4月、ほぼすべての商品を製造するこの関東工場で、改革のメスが入った。製造ラインの一新など、投資総額は110億円を超えた。
そのプロジェクト名は「MPS(Meiji Production System)」。明治製菓生産方式の導入である。
たとえば、年間30億円を売る人気商品「ベストスリー袋」(ミルク、ハイミルク、ブラックの3種類をミックスした袋チョコ)の製造ライン(下図)。成型された3種類のチョコレートが、ICチップの埋め込まれたコンベヤーに載って流れていく。チョコレートは、ICチップ情報を基に、3台のツイン機(2列の小袋包装機)に分かれて個包装される。完成までの所用時間は、冷却も含め1時間。1時間当たり3600袋の製造能力を持つラインで働く作業員は、たったの10人。3年前では考えられなかった光景だ。
実は、MPS以前の生産体制は、かなり“横着”だった。過去3年分の販売データを基に需要予測を立て製造する現在と比べ、以前のそれはどんぶり勘定。「同じ商品をどんどん作り、在庫がたまる一方だった」(岸田一男・前関東工場長)。ベストスリー袋も、今でこそ1日で製品化するが、以前は製造開始から完成まで、なんと実に営業日12日(実質3週間弱)を要していた!
理由は、3種類を並行して同時成型できなかったためだ。以前の製造過程は、1種類を3日続けて作り、いったん仕掛品(調整在庫)としてストックヤードに保管する。配管洗浄に丸1日。3種類の製造を終えたところでシングル機(1列の小袋包装機)で袋詰めを行い、ようやく完成。これでは、小売りから出荷要請が来ても迅速に増産できないうえ、一度作り始めたらストップが利かない。供給不足を防ごうと、どうしても過剰生産に陥りがちだった。また、ストックヤードへの保管作業など、人員も今の3倍以上を要していた。
これを皮切りに、明治は売り上げ20億円以上の商品すべてに、MPSを導入した。製造ラインへの設備投資だけで70億円を投入。切り替え製造により、1台で数種類を同時製造できるようにした。品質チェックは、すべてのラインにX線検査装置をつけ自動化。人員削減効果もさることながら、不良品が激減した。