原料高騰で業界危機! 経営統合決めた明治製菓”チョコレート改革”進行中
贈答ではなく“自分買い” 高級チョコ市場を研究
明治が模索する新たな活路、その一つが、高級チョコレート市場だ。
東京・京橋の「100%チョコレートカフェ」は、明治がプロデュースするテーマカフェ。「チョコレートを食べる文化を広げたい」(角直樹・スイーツ事業開発室長)と、04年12月にオープンした。内装には、セレクトショップ「BEAMS」などを手掛ける売れっ子デザイナー、片山正通氏を起用。チョコレート工房に見立てた店の壁一面を、56種類のチョコレートが並ぶガラスのショーケースが埋め尽くす。飲み物を注文すると、365日、日替わりの板チョコがサーブされる。
今年1月、新宿伊勢丹で開催されたチョコレートの一大イベント「サロン・ド・ショコラ」。本拠地パリではフランス政府やパリ市長が後援者に名を連ね、敷居の高さから日本メーカーの出展が容易ではなかったこのイベントに、明治のチョコレートカフェが参加を認められた。世界最高峰のショコラティエ(チョコレート職人)たちのブースと並んで、明治は和三盆や黒砂糖など和素材をアレンジした作品など56種類のオリジナルチョコレートを出展した。
サロン・ド・ショコラでの消費者の動きから、伊勢丹の洋菓子バイヤー、松永朗氏は、「1人当たりの平均単価は2万円。贈答用でなく、“自分買い”へと購入動機が変化している」という。モノではなく、シーンを売る。消費者の心をつかむ要素がそんなところに移っているとすれば、明治のカフェ事業はまさにその線をトライしているといえる。現在、2店目の出店を計画中だ。
新会社への移行で、明治はブランド力を強化し、アジア展開に本腰を入れる。高品質を誇りながらも、菓子・食品業界の海外進出は遅れてきた。明治の海外売り上げは現在2割程度。先細りの国内市場に対し、中国・ロシアをはじめとする新興諸国はまさに成長途上。これまでは自力展開してきた明治だが、今後はM&Aも視野に入れる。経営統合は「原材料高が苦しい中で、むしろ“売り”を伸ばして、成長路線で解決していこう」(佐藤社長)という攻めの決断である。MPSによる機動力の確保は、海外に打って出るうえでの、ほんの基礎固めだ。これからが本番であることは言うまでもない。
(前野裕香 撮影:吉野純治 =週刊東洋経済)
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