あの英国一家が日本食を愛してやまない理由 短期間では味わいきれない多様性がある

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――日本食に変わってほしい点があるとすれば。

欧米人からすると、もうちょっとだけ酸味が欲しいな、と思うときがある。日本はたくさんの柑橘系にめぐまれているので、たとえばみそ汁にちょっとそうした柑橘類を垂らしたり、という工夫があってもいいな、と思うことはある。

もう1つは環境面の話で、日本は食品廃棄に対する意識が低すぎると思う。パッケージにしても、過剰包装だ。欧州では、デンマークを中心にいかに食品廃棄物や無駄を減らすかということに関心が集まり始めている。もう1つ、食の伝統を守ってきた高齢者やその知識をどう守って、生かすかも今後大事なポイントになるだろう。

日本人はほかの国の人と同じくらい幸せだ

――日本の食品の世界市場でのポテンシャルは。

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今の日本は世界中から観光客を誘致することに躍起になっている反面、日本の食品が持つポテンシャルに気がつけていない、というか、食品の輸出拡大にもっと力を入れてもいいのではないか。もちろん、中には大量生産できないものもあるのだろうけど、焼酎や泡盛、ワイン、海ぶどう、麹、甘酒、餅、日向夏のような柑橘類……挙げれば切りがないが、多くの食品は海外市場で勝負できるポテンシャルがある。

日本酒だってもっとプロモーションするべきだ。アメリカやフランスでは、日本酒人気は高まっているが、一つひとつの銘柄が知られるほどにはなっていない。日本食レストランが世界で人気を集め始めているのだから、これから日本の食材や食品ももっと注目が集まるはずだ。

――デンマークに移住中のマイケルさんとは前回、「なぜ日本人はそんなに幸せじゃないのか」という話になりました。これだけ食のレベルが高くて、多様な文化に富み、安全な国に住んでいるにもかかわらず、日本人が幸福感を感じていないのはなぜでしょうか。最近発表された国連の「幸福度ランキング」では、日本は54位でした。

いやいや、日本人はほかの国の人と同じくらい幸せを感じていると思うよ。そもそも、幸福度ランキングの質問項目自体に問題があるのではないか。「幸福」に対する日本人の考え方や、質問への答え方もあるだろう。日本は、個人の幸せよりも、集団としての幸せが重視される国だし、近年は金銭的な不安を抱えている人が多いようにも見受けられる。派遣や過労の問題もあるだろうから、ハッピーとは答えにくいのかもしれない。

だいたい「ハッピー(幸福)」って言葉がいいかどうかもわからない。満足感や充足感、安心感、それから心地よい、という言葉のほうが今の状態をよく表しているかもしれない。北欧人だって、人生に満足していて充足感を持っていて、心地よく感じているとしても、別にハッピーなわけではない。ハッピーだったらあんなにたくさんの人が抗うつ剤を処方されているわけないからね。

倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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