あの英国一家が日本食を愛してやまない理由 短期間では味わいきれない多様性がある

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――突き詰め続けているマイケルさんにとって日本食の魅力とは。

ジャーナリストとしては、47都道府県すべての食が異なり、特徴があって、特別だという点に引かれる。多様性がすばらしい。しかも、それぞれの食にはとんでもない面白いストーリーがあって、あと10冊は本が書けそうな勢いだ。だいたいまだ30都道府県くらいしか訪れていないし、四国だけでも1冊くらい書ける。

食いしん坊としては、なんといっても日本食の「うまみ」「美味しさ」だね。それから、食感。日本食は欧州の食事と比べて食感のバラエティがすごい。そして、見た目の美しさと季節感。日本には、細かく分けると72も季節がある。たとえば、桜の時期もそうだ。桜にもたくさん種類があって、「メインの桜」が散ると、多くの人はたとえ違う桜が咲いていたとしても、「桜の季節は終わった」と認識している。こういう細かい季節の分け方が身に付いていることに驚く。

欧米でも「職人」の概念は広がっている

――いつもながら多くの料理人や生産者に会っていますね。

日本には、本当にたくさん犠牲を払ってでもいいモノを作りたいという人たちがいる。彼らの目的は、金持ちになることでも、有名になることでもなくて、ただ顧客にいいモノを提供したいという思いで作っている。パティシエの杉野英実さんや、焼酎が台頭する中、沖縄の泡盛を守り続けている人たち、有田焼の陶芸家たち、喜多品……本当に驚くべき人たちばかりだ。

欧米でも最近、ものづくりを極めようというシェフが増えているが、多くは日本で修業をしたり、日本に影響を受けている。最近では「職人」という言葉も知られるようになっている。欧米では、バリスタだったり、バーテンダーだったり、細部にまでこだわりを持つちょっとおしゃれな料理人を意味し始めている感はあるが……。

――著書の中では、日本食の弱点として革新的ではない点を挙げています。

正直に言うと、それはちょっと間違っていたと思う。日本の中にも、日本食にイノベーションを起こそうとしている人はたくさんいるし、実際にイノベーションも起こっている。著書の中では、僕の友人が「いろいろ試して、ベストの方法を編み出してやっているだから、変える必要はない」と言っているが、それは事実だ。

僕が会った職人たちは、変化やイノベーションを起こしているが、それは段階的なもので、大きな変化を一気に起こしているのではない。日本ぐらいの国であれば、誰かがどこかで大きな変化を起こしていてもおかしくない。しかし、それが目立つこともなければ、日本人は新しいものが好きな割には、食については大きな変化を求めていないように感じる。それが僕には驚きで、それを指摘したかったのかもしれない。

――ということは、日本食はこのままでいいと。

それが、僕がいつもぶち当たる大きな問題だ。日本に来るたびに、日本食に変わってほしい、それとも変わってほしくない?という自問を繰り返している。人々に「日本食がものすごく変わった!」と伝えたいのか、それとも「日本食はまったく変わらない良さがある」と伝えたいのか……。ものすごくワガママを言えば、日本食は今のままであり続けてもらいたいと思っている(笑)。ただ、変わることは避けられないだろうね。

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