家族の形は人それぞれ 養子という選択肢も
フランスの生殖補助医療界では、体外受精の成功率も課題に挙がっている。生物医学機構のデータによると、09年時点の成功率は人工授精が12%、体外受精が24%となっており、体外受精の成功率が30%を超える米国と比べると低い。
冒頭のアンナさん夫婦は、体外受精を2回試したが、公立病院では長い待ち時間と、機械的な扱いに涙することもあったという。バカンスを挟むから次の予約は2カ月後──フランスではよくあることだ。
そこで、2回目の体外受精はパリ郊外の私立病院に変えて挑んだ。待ち時間は少なく、検査のためにラボに行く必要もない(フランスでは通常、血液検査などは検査専門の機関に別途予約をして行くことになる)。専門の精神科医もおり、精神面を支えてくれた。
私立病院は快適だが、保険がカバーする費用を超えると、自己負担となる。この病院の場合、人工授精で200ユーロ程度。アンナさんのように、年齢制限のタイムリミットを感じている人は“金より時”で、私立病院を選ぶ人も多いようだ。
結局、アンナさんの体外受精は失敗、42歳のときに不妊治療をやめ、養子という選択肢を選んだ。
アンナさん夫婦は6年前の不妊治療開始と同時期に、パリ郊外に家を建て始めた。いつか家族が増えることを考えて、パリ市内のアパルトマンでは手狭と考えたからだ。今、庭つきのマイホームには、両親とは肌も髪の色も違う5歳の男の子がいる。子どもは、妊娠を夢みていた頃から決めていたように、ドイツ語とフランス語を話すバイリンガルに育てている。出生のことを聞かれたら、すべて話すつもりでいる。
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