フランスでは2007年、生殖補助医療により、1万4710人の赤ちゃんが誕生した(右下グラフ参照)。これはその年に生まれた新生児全体の1.8%に当たる。
フランスはカトリックの国だ。個人主義でありながら、社交はカップル単位、家族や子どもを大事にする文化があり、連帯を重んじる。
フランスの社会保障制度は社会の変化に適応してきた。社会的、経済的地位を得て自分の欲望に正直になったフランスの女性たちは、産みたいときに産みたいと思っている。
女性のライフスタイルが多様になったこともあり、高齢で出産する人も増えている。最初の相手と別れた後、新しいパートナーと出会い、数年ぶりに出産、という人も珍しくない。有名な例では、サルコジ前大統領夫人のカーラ・ブルーニがいる。昨年、43歳で10年ぶりに第2子を儲けた。
女性たちが不妊治療に臆せずに進む背景には、保険でカバーされているという安心感だけでなく、産婦人科との付き合いが10代の頃からということも関係ありそうだ。
フランスではピル(低用量経口避妊薬)が普及しているが、ピルは婦人科医の処方が必要で、多くの女性が10代後半で最初に産婦人科に足を運ぶ。そして、妊娠したいと思った場合、ピルの服用をストップするところから始める。
妊娠をコントロールするという感覚も強く、それが自然に達成されないなら治療をするのが普通、と考えているようだ。「どうして妊娠できないの?」という悩みやつらさはあっても、不妊治療を恥じるような風潮はない。
一方、問題点がまったくないわけではない。妊娠できないなら即不妊治療というステップに疑問を抱く人もいる。
妊娠・出産情報サイトに寄せられているさまざまな不妊治療体験談には、すぐに不妊治療を勧められ、言われるままに診察を受けたが不快感が募ったという声もある。不妊治療に限らず、フランスの公立病院では日本の病院のようなサービスは期待できない。
また、非配偶者間の人工授精や体外受精で必要となる卵母細胞の提供者が少なく、常時1000組以上のカップルが提供を待っているという。政府機関の生物医学機構では、卵母細胞提供を促すためのサイトを立ち上げている。
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