「授からないなら、それを受け入れる」という藤岡の言葉を聞き、今度は私が切り返した。
「それならばなにも、30代後半を狙うという、そもそも成功率の低い婚活をして、その後さらに成功率の低い妊活をすることは、ないのではないですか? ここは考え方を切り替えて、40代後半、50代の同世代の女性と再婚するのはダメなんですか? 残りの人生をパートナーと楽しく豊かに暮らしていくという選択もありますよ」
しかし、藤岡は頑として譲らなかった。
「さっきも言いましたけど、可能性がゼロでないかぎりはそこにかけたい! ベストを尽くしたいんです」
最後のチャンスにかけたい中高年
「子どもをあきらめたわけじゃない」「可能性があるならチャレンジしたい」「最後のチャンスにかけたい」。藤岡が口にしたのと同じ言葉を、40代、50代、時には60代の独身男性からよく聞く。アラフォー女性からも同様だ。
もちろん妊娠と出産には個人差がある。40代初産で母になる女性もいるし、40代後半、50代、60代でも父親になる男性もいる。
それが有名芸能人だったりすると、華々しくニュースに取り上げられる。その裏には、もしかしたら不妊治療も含め、莫大な費用がかかった妊活があったのかもしれないのだが、そこにはいっさい触れず(不妊治療したことを告白する芸能人も中にはいるが)、子どもを授かったという喜びの事実のほうが大きく切り取られて報道される。
そんなニュースは、子どもを授かりたいと願う中高年に希望を与えてしまう。
可能性にチャレンジしていくのは、すばらしいことだ。婚活にしろ、妊活にしろ、他人がとやかく言うことではない。莫大な費用のかかる不妊治療も、そのおカネを出すのは本人なのだし、なにより人生はその人のもの。どんな道を選択しようが個人の自由である。
また、そうした人たちに寄り添い、希望に見合う相手を見つけ、ご縁を結んでいくのが私たちの仕事でもある。ただ、そうした人たちを目の当たりにする機会の多い仲人仲間たち(私も含めて)は、心の中でこうも思っている。
「そんなに子どもが欲しいなら、なぜもっと早い時期に結婚しなかったのか」
この問いに対して、相談に来た人たちはこう答えるだろう。
「仕事が忙しくて、気づいたらこの年になっていた」
「奥手なので、なかなか恋愛する機会に恵まれなかった」
「恋愛をしても、それが結婚につながらなかった」
「結婚話が出たこともあったが、最終的に結婚には至らなかった」
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