「裁量労働制」批判だけしても何も解決しない 生産性についての本質的な議論を見逃すな

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さて、今回問題となっている裁量労働制の改正ですが、これは企画業務型の対象業務について、①課題解決型提案営業(コンサル営業などと呼ばれます)、②全社的なPDCAサイクルを回す業務についてその対象を拡大しようというものです。

確かに、現実には「名ばかり裁量」ともいうべき、怪しい裁量労働制の適用がまま見られるのも事実です。まったく裁量がない若手に適用したり、裁量労働なのに朝の出勤時間を設定したり、適用対象外である単なる営業をさせたりといった現実は確実にあります。しかし、不適切な使い方をするのは良くないという話と、裁量労働制自体の是非とは、まったく別次元の話です。

裁量労働の趣旨徹底という観点からはプラスの面も

今回の改正では、始業終業時刻の自由化や(現在も存在する制度だが、趣旨を徹底するために明記)、改正法に基づく指針により経験3年未満の未熟な者への適用不可、インターバル規制や特別休暇などの健康確保措置が明記される予定となっています。そのため、今回の改正自体だけを取っても、労働者に対する健康配慮、裁量労働の趣旨徹底という観点からはプラスの面があることはあまり報道されていません。

さらに言えば、データうんぬんの問題よりも、今後の労働法制全体をどう考えるかのほうが、はるかに重要です。前回記事「明治時代の法律を引きずる日本の『生産性』」でも述べたとおり、日本の労働基準法は、明治時代から脈々と続く工場法の歴史をくんでいます。

労働の評価はあくまで実働した時間で測るということが基本となっており、裁量労働制以外の例外は管理監督者(残業代が出ない管理職層)くらいです。

しかし、現代はホワイトカラー労働が激増しており、しかも今後はこれまでやってきた仕事の延長線上に未来があるのではなく、新しいイノベーションや新規開発、新しい業務の進め方などが求められています。そのため、労働の評価は、その成果・価値で考えるべきウエートが増加する時代になりつつあるのです。もちろん、現代でも工場労働者などは、単純に時間で測ったほうが合理的であることは言うまでもありません。

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