「脳の記憶補助装置」が人の生き方を変える ナレッジスイート社長ロングインタビュー
稲葉:その時にクライアントから言われたのが、1人の営業マンが抱えられる顧客数、1日に訪問できる顧客数は限られているということ。ですから、営業成績の差は受注率の差によるわけです。それならどうしたら受注率を上げればいいか、を考えるわけですが、営業成績を挙げている人のノウハウを展開するとか人を教育するとかいったことは、簡単にはできないわけです。
ここは発想の転換が必要です。いかに営業マンの教育をアップするかではなく、営業マンが抱えられる顧客の数を増やすにはどうしたらいいかを考えればいいんですよ。たとえば月に100人の顧客を抱えて3回訪問し、50%の受注率だとします。この50%を簡単に向上できないんだとしたら、顧客の母数を100人から120人に増やせればいい。ただそうすると、訪問回数を減らすか、1回の訪問時間を短くしなければなりません。1回の訪問の密度を上げて、話す時間や内容を精査する必要がある。そのための方法がSFAなんです。属人的なナレッジに依らず、システマティックに原理原則で動くためツールとしてSFAがある。
村上:なるほど。事業としては、「ナレッジスイート」と「GEO CRM」がメインだと思いますが、それぞれどのような事業でしょうか?
SFAとかCRMは本来営業社員のためにある
稲葉:僕らは「脳の記憶補助装置を作る会社」と表現しているんですが、これはさっきの例にあてはめると、限定された顧客数からの受注率を上げることを企てるのではなく、営業に必要な情報をいつでも取り出せるようにすることで、顧客の母数を増やすことを企てる、ということです。もう少しわかりやすい例で言うと、商談の場面で「一度会社に戻って確認してお返事申し上げます」とか「事例を探して次回お持ちします」ということがあると思うんですが、その場で手元のスマートフォンを確認して回答出来れば時間も回数も節約することができますよね。これが僕らの企図する「1回の訪問の時間や内容の密度を上げる」ということです。そうした個々人の対応プロセスを全部、組織内で可視化するんです。SFAとかCRMって経営者のためのものになってしまっているんですけど、僕は、本来は営業社員のためのものだと思うので、本来の使い方ができるようにしたいと思っています。
村上:そこがポイントなんですね。御社のCRMは経営者視点というより、営業マンの視点に立った営業視点なんですね。