「脳の記憶補助装置」が人の生き方を変える ナレッジスイート社長ロングインタビュー
村上:そこは非常に重要な判断ですね。投資家もどっちの戦略をとるのかによって、いい意味でも悪い意味でも評価が分かれるでしょうし、投資判断に大きく影響しそうですね。今回の上場で獲得された資金も限られていますから、たとえば営業を優先して人材確保に使うのか、もしくはシステム投資に重点を置くのかなど、判断が求められますね。
稲葉:それは、クラウドビジネスにとって一番重要な経営視点だと思います。通常毎月の利用料が12カ月分入ってくるのは翌期なんです。契約期は数カ月分しか売上計上できません。また営業経費もかかります。決算のタイミング次第では、翌々期に12カ月分フルにもらえるタイミングもあります。一方でプロモーション費用を一気にかけたり、人を一度に多く採用したりすると、その期の業績に大きく影響が出てしまいます。そこの舵取りが難しいところですね。クラウドビジネスは完全に先行投資型のビジネスなんです。
日本のマーケットは短期的な赤字を非常に気にしている
村上:国内と海外の機関投資家で意見に違いはありますか? たとえば、海外の方がもっと先行投資でやったほうがいいとか?
稲葉:海外はそうですね。あと国内の大手も同じで、「LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)で物事を考えたほうがいい」「一時的な株価を気にすることはない」と言いますね。ただ、日本のマーケットは短期的な赤字を非常に気にしていると感じます。考え方としてはあるのかもしれませんが、日本のマーケットを見てしまうとまだまだ難しいだろうなと感じてしまいます。
村上:当時、KDDIや電通など、大手企業と事業提携されたり、出資を受けられたりしていますが、どのようにして関係を築かれたのでしょうか。
稲葉:僕が経営者として心掛けてきたことは、狙うべきターゲットとなる企業の決算資料を全部読み込むということです。そして、彼らの戦略の要素を、僕らの会社のビジョンや展望に埋め込ませる形で、SEO対策として自社ホームページに仕込むんです。そうすると、彼らが自社に近いビジョンを持つプレイヤーを探した時に検索上位に来て、彼らから問い合わせが来るんです。通信業者と組みたいと思った時には、ソフトバンク、ドコモ、KDDIの資料を全部読み込みました。その結果、KDDIから声がかかったんです。
村上:それは非常にユニークな取り組みですね。広告宣伝のプロならではの、インバウンドを作る戦略が素晴らしいですね。
稲葉:あとは、全部ゴルフです(笑)。IT業界では最初、何のつながりもなかったんですけど、ゴルフのコンペに出続けることによって多くの方とのつながりができました。会社の中でも、僕のゴルフだけは認められていると思います。
村上:本日はありがとうございました。日本の中小企業を活性化する取り組み、楽しみにしております。
(ライター:石村研二)
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