「脳の記憶補助装置」が人の生き方を変える ナレッジスイート社長ロングインタビュー
稲葉:ただ、最初にお話ししたように、中小企業の社員は1人何役もこなさなければならないので、それをサポートするものとして活かせるのであれば、データマイニング、AI、IoTといった新しい技術を選択することになると思います。今のマーケットはキーワード先行で動いているという気がしますが、僕らはニーズ先行で物事を考えているので、「お客様にAIを提供します」ではなくて、ニーズに基づいてどんな技術を選択するかを考えるんです。もちろん研究開発はしているんですが、新しい技術で既存の技術を代替するという考え方ではなくて、お客さまのニーズが先にあって、どの技術を当てはめればそれに応えられるのか、またどれだけ効率化や生産性に寄与するのか。という考え方でやっています。
僕らにとって一番悩ましいのは、汎用性を高めるという課題です。たとえば運送業のお客様から「こういう機能を作ってほしい」という声が溜まったとして、その機能が運送業でしか使えないのなら意味がないので、どうやって汎用的な機能にするかを考えるんですが、これが難しいんです。汎用化できない機能は作りません。その判断が一番難しいですね。
小林:世の中によくある、顧客ごとにカスタマイズしていく方向ではないんですね。
稲葉:それは絶対にダメですね。ユーザー側がカスタマイズしていけるように、ベースは汎用度の高いものにしないといけません。実はそれが一番難しく、真剣に考えてプロダクトに落とし込んでいく必要があります。僕らは業務の効率化を実現させるためのプラットフォーマーなんです。プラットフォームにさまざまな汎用的な機能を乗せて、ユーザーにはその中から機能を選択してカスタマイズして使っていただく。自分にとって使い勝手のいいものを自分でアレンジできるようにすれば、ユーザーには使っていただけます。そうすればデータが溜まり、僕らもマネタイズできるんです。
大胆な投資戦略を取れるか
村上:既存ユーザーにデータ量を増やしてもらったほうが、利益率の上がり幅は大きいですよね。一方で、まだマーケットでのサービスの浸透度は低いですから、投資先行で攻めていき、この先10年くらいは拡大期ととらえておけばよいでしょうか。
稲葉:今回のロードショーで機関投資家も意見が割れているところです。「アマゾン的に先行投資型で動け」という機関投資家が多い一方で、「日本のマーケットの制約を考えると、早い段階で利益を確保しながら前に進むしかない」という意見もあって、どちらの意見を優先させるかの判断は難しいと思っています。