トランプは「北朝鮮への特使」に誰を選ぶのか ディ―ルの天才が描く対北朝鮮戦略とは?

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「無名」の特使なので、最初のうちは、金正恩氏と会えず、金正恩氏の信頼する代理人との面談の形でのスタートとなったとしても、トランプ氏と金正恩氏の直接電話で、フィードバック確認し、幅広く展開できる。

その北朝鮮との交渉を進めようとしているトランプ政権にとって、大きな足かせになっているのはほかでもない。トランプ陣営のロシア疑惑を追及しているミュラー特別検察官の存在だ。北朝鮮に影響力をもつロシアとトランプ政権との間の交渉は、対北朝鮮問題の解決に重要なポイントになる。

ミュラー特別検察官は「反トランプ」バイアスに固執

「反トランプ」のバイアスに固執しているミュラー氏がロシア疑惑捜査を担当しているため、米ロ間の緻密な話し合いが進められない状況になっている。北朝鮮との交渉を進めるうえで、ミュラー氏が障壁になっているというマイナス面については、米メディアでもしばしば指摘されている。

すでに、本欄「ミュラー氏による捜査が幕引きへ向かうワケ」で詳述したように、憲法と刑法の関連する法領域で、全米的な権威とされるハーバード大学ロースクールのアラン・ダーショウイッツ名誉教授は「ミュラー特別検察官の反トランプという強いバイアス」を指摘している。そこで、そのミュラー氏に対峙する際に、トランプ大統領が打つべき「次の一手」の方向性を解明しよう。

トランプ大統領は、ミュラー氏の事情聴取には応じないのではないか。何も語らず「沈黙を武器」にして、ミュラー氏の信用力の欠如と、バイアスに基づくずさんな捜査と対峙する戦法だ。憲法修正第5条(自己に不利益な供述を強制されない)に基づく、「強固な沈黙」の戦略を採用するものと、筆者は予測している。

「反トランプ」が多い米メディアでさえ、ミュラー氏は「罠(わな)」に掛けようと狙っているという見方が多くある。法律専門家の間では、憲法修正第5条に基づき、何も供述しないというのが、トランプ氏の戦略として正しいとする見方が圧倒的だ。

その一方で、そういう戦法は政治的なリスクを伴うし、多弁なトランプ氏らしくないとの意見もある。だが、その「政治的な」懸念は間違っている。憲法の精神こそは、「政治の本質」にほかならないからだ。

「ミュラー氏の罠」と米メディアが報じているように、仮に、ミュラー氏が裁判所の聖域である「証拠」をゼロから創り上げ、偽証罪の冤罪を生みかねない状況を狙っているのであれば、トランプ大統領は、憲法修正第5条に基づく「沈黙を武器」にする戦略を採用し、ミュラー氏には何も語らないのが妥当だ。それは「アメリカン・ジャスティス(米国の正義)」を守ることであり、「米国憲法」の精神を守り抜くことになるからだ。

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