北朝鮮と米国が向かうのは「戦争」か「対話」か トランプ大統領のツイートに惑わされるな

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金正恩氏を「ロケットマン」を呼んでいるトランプ大統領。両者に対話の可能性はあるのか(写真:KCN/ロイター)

北京からベルリンに至るまでの世界中の政府、特に北朝鮮の金正恩政権は、国連が北朝鮮にどのように対応するかを懸命に割り出そうとしている。今後、北朝鮮問題は戦争か対話のどちらに向かうのだろうか。

複数の情報筋によると、日本政府の高官たちはドナルド・トランプ大統領のツイッターから米国の方針を読み取ろうとすることをやめてしまったという。その代わりに、高官たちは私的公的を問わずトランプ政権内で重責を担う人物たちの発言を注意深く見守るようになった。すなわち、ジェームズ・マティス国防長官を筆頭として、ハーバード・ R・マクマスター国家安全保障問題担当大統領補佐官、レックス・ティラーソン国務長官などの言動に注目しているのである。

誰の発言を信じたらいいのか

だが、実際にこの方法で米国の方針を読み取るのがいかに困難かは、先週の出来事によって示された。先週、米国のメディアでは、米国が複数の経路を通じて北朝鮮と接触している旨を、ティラーソン国務長官が北京で語ったことが大々的に取り上げられた。

ところが、これに対してトランプ大統領が翌日、ティラーソン国務長官が「ちっぽけなロケットマンと交渉しようとして時間をムダにしている」とツイート。同ツイートは、「レックス、徒労に終わるようなことはもうやめにして、しなければならないことをしよう」と続いた。これは軍事行動開始の脅迫と見なすこともできてしまう。

いったい誰を信じればいいのか?

北朝鮮への制裁強化と圧力の組み合わせがトランプ政権の実際の方針だ。これには軍事行動を意図的にほのめかすことも含まれており、これが平壌の政権を協議に引き出すことにもつながっている。ティラーソン国務長官が北朝鮮との接触を認めたことは、米国の北朝鮮政策をつぶさに見守ってきた者にとっては驚くようなことではなかった。同氏の発言はむしろ、北朝鮮問題解決に協力しているという外交上の成果を、習近平国家主席が次の中国共産党大会において示せるようにという意図によるものだった。

北朝鮮との接触は、すでに数カ月にわたって、主に国務省のジョセフ・ユン北朝鮮政策担当特別代表によって北朝鮮国連使節を通じて行われてきている。ユン代表に近い筋によれば、同氏は北朝鮮政府との真剣な会談の機会を模索し続けているという。

5月にはノルウェーでの非公式協議に合わせて、チェ・ソンヒ北朝鮮外務省北米局長と会合。ユン代表はより広範な議論の第1歩としたかったが、ティラーソン長官とホワイトハウスの意向により、北朝鮮の捕虜となっている米国人に関する折衝のみが行われた。その後、ユン代表は平壌を訪問。その結果、学生のオットー・ワームビアが翌月釈放されたが、米国への帰国後数日で死亡してしまった。

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