北朝鮮と米国が向かうのは「戦争」か「対話」か トランプ大統領のツイートに惑わされるな

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9月初めに類似の会合がスイスで開かれ、米国、韓国、日本などの各国の専門家と、チェ・カンイル北朝鮮外務省北米副局長に率いられた派遣団が出席した。北朝鮮側にとってこの会合は実情調査の色合いが強く、米国の方針の把握を主眼としつつ、北朝鮮の対話への意欲を伝えようとするものだった。

「北朝鮮側は対話に意欲を示し、対話の必要性も理解していた」、と会合参加者の1人は語る。「しかし、北朝鮮側は協議再開の前に米国の北朝鮮に対する敵対的行為を確実に停止することを求めていた」。

会合参加者によれば、北朝鮮側は米国が核兵器使用の脅迫をやめること、制裁方針の放棄、北朝鮮が脅威と見なす軍事演習の終了、北朝鮮指導者を対象とした敵対行為の中止を暗に求めていたという。非核化をゴールとしたどのような議論も現況では金政権の当面のアジェンダには入っていないという。

対話に対して懐疑的な見方も

トランプ政権の高官たちは協議が可能であることを、ある程度の具体案とともに示唆してきた。しかし、これはすべて北朝鮮の以前の非核化に関する合意に基づいている。9月25日の戦争研究所(Institute for the Study of War)での珍しく半公式的な場で、マクマスター国家安全保障問題担当補佐官は、早期の軍事的解決はありえないことを認めた。

軍事情報誌『ディフェンス・ワン』によると、マクマスター補佐官は「この問題を解決する精密照準爆撃といったものはない」と明言。対話は可能だが、北朝鮮がミサイルや核兵器の開発を続けるのであればそのかぎりではなく、ミサイルと核の実験の停止がまずは第1のゴールだと同補佐官は続けた。さらにブルームバーグによると、同補佐官は対話の前提条件はないとしたうえで、核施設の査察を受け入れ、核兵器を将来廃絶する意思を示すことが、信頼構築への第一歩だとしている。

が、金政権はこうした措置を検討したうえで、却下している。「問題は対話ではない」と、ソウルの半官半民機関の世宗研究所のデビッド・ストラウブ特別研究員は自説を述べる。「問題は話す内容だ」。

対話に対して、懐疑的な見方もある。米国務省に30年勤務し、北朝鮮に関する6カ国協議にも参加していた元官僚のストラウブ研究員も対話の有用性に対して疑問を持つ1人だ。同氏は、こうした対話を通じて北朝鮮の核保有国という立場が既成事実として受容され、イランやほかの核兵器を欲する国々を対象としたより広範な核不拡散政策は言うまでもなく、韓国や日本との同盟関係も徹底的に弱体化されることを危惧する。

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