ドナルド・トランプ米大統領は就任1年の節目に、多くの単独インタビューを受けた。その中で、「北朝鮮の金正恩氏との電話会談をしたのか」との問いに対して、「これまで会話したかどうかは述べたくない」と答えている(参考:トランプ大統領が単独取材で語った10のこと)。
何事にもズバリと言ってのけることが多いトランプ氏にしては微妙な答弁だ。その一方で、「金正恩氏と良い関係を持ちたい」とも、あるインタビューで述べている。
これはいったい何を意味しているのだろうか。一部のメディアで米朝軍事衝突も不可避という観測も飛び交うなかで、トランプ氏の真意は何なのか。そこで見逃してはならないのは、トランプ氏が「ディ―ル(取引交渉)の天才的芸術家」として、ウォール街の誰しもが認める強力なネゴシエーション力の持ち主ということだ。
トランプ氏は「無名な特使」を派遣する?
そのネゴシエーション力は、バラク・オバマ前大統領やビル・クリントン元大統領のそれを上回っている。若きエリートとして一気に頂点に立ったクリントン、オバマ両氏は、演説や討論会の場でも、内面の激しい感情が「表情」に表れる癖があった。それに対して、トランプ氏は、長年、複雑なネゴシエーションを経験したこともあり、激しいのだが、同時に安定さがあり、余裕もあると筆者は判断している。
天才ネゴシエーターのトランプ氏ならば、金正恩氏とのトップ同士の電話会談だけでなく、さまざまなネゴシエーション戦略を考えているはずだ。これまでのトランプ氏の言動に基づいて分析すると、「無名な特使の派遣」という選択肢が、ネゴシエーション戦略の方向性の1つに入っていると考えることができる。
では、なぜネゴシエーション戦略でなければならないのか。なぜ無名の特使を派遣する可能性があるのか。
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