安室奈美恵「Finally」200万枚を突破した理由

年末の紅白では瞬間最高視聴率48.4%を記録

先に「90年代記号」活用プロモーションという、商売っ気のある話をしたが、今回のセールスを中心となって支えた「固定票」を培ったのは、「J-POP」から一定の距離をおいた、安室奈美恵の独立独歩の音楽活動であり、それを貫いた安室本人及びスタッフの「勇気」である。その「勇気」に「商売っ気」が結びついてこその、200万枚だと考えるのだ。

「90年代懐古」アプローチへの注意点

最後に、再度「商売っ気」の話に戻る。この『Finally』のケースから、他のエンタメ市場にも転用できるポイントは、「90年代懐古」というアプローチだと考える。

先に述べた、30代後半から40代前半の「ロストジェネレーション」が、消費市場の中核となってくる。ということは今後、あの世代のエモーションに突き刺さる「90年代懐古」というアプローチが、有効になっていくだろう。

ただし、そのときに注意すべきことがあると思うのだ。最近「バブルいじり」とでも言うべき風潮がある。平野ノラや、大阪府立登美丘高校ダンス部による「ダンシング・ヒーロー」のダンスなど、「バブリー」なものを、過度に誇張して笑いに変える風潮だ。

この風潮に対して、一般に「バブル世代」と言われながら、当時ディスコにほとんど行かなかった私は、しばしば違和感を覚える――「俺の青春を、そんな極端なあれこれと、一緒くたにしないでくれ」と。

ということは、さらに閉塞した時代=バブルが崩壊し、地震やサリンや同時多発テロに揺れた時代に、青春を過ごした彼(女)らに対しては、その事実に対する強いリスペクトを持って、「90年代」を取り扱わなければいけないと思う。

言い換えれば、『Finally』のクールなプロモーションのように、過去の曲を、今一度ていねいに再レコーディングした安室奈美恵のように、決して過去を茶化さず、真摯なまなざしであの時代を見つめ直すことだ。

失われた何かを、一つひとつ取り戻すように。『Finally』の一つひとつの楽曲を大切に聴いたであろう、あの世代に向けて。

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