シンガポールに出現した「無人空港」の凄み チャンギ空港第4ターミナルが示す近未来

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この第4ターミナルには現在、香港のキャセイパシフィック航空、韓国の大韓航空、ベトナム航空という3つのフルサービス航空会社と、マレーシアなどのエアアジアグループ、フィリピンのセブパシフィック航空、中国の春秋航空という3つのLCC(格安航空会社)が乗り入れている。日本との直行便はまだない。

第4ターミナルは広々としたフードコートも特徴的だ。タブレットで注文できたりするなど、こちらもテクノロジーの活用が進んでいる(記者撮影)

同じ敷地には、以前「バジェットターミナル」というLCC専用ターミナルがあった。それを取り壊し、2014年から約800億円を投じて建設されたのが今回の第4ターミナルで、年間1600万人の乗客受け入れ能力を持つ。バジェットターミナルは同700万人ほどの能力しかなく、LCCの急激な成長に追い付いていなかった。

「LCC専用ターミナル」は不要だった

さらに「安く旅行したい乗客でも、チャンギ空港には(他のターミナルと)同様の高い期待を持っていた」(チャンギ空港の運営会社)。LCCが支払う施設利用料を安くするための簡素な作りは支持されなかったのである。「需要の変化を素早く察知し、あっという間に新たなターミナル建設を決めてしまったのはさすがだった」と航空会社関係者は舌を巻く。

チャンギ空港の敷地内に建設中の商業施設「ジュエル」(2019年開業予定)。ターミナル以外でも空港内の体験をより充実させようとしている(記者撮影)

世界の空港間競争は激しさを増すばかりだ。2018年1月には、韓国ソウルの仁川空港で第2ターミナルが開業する。2月に行われる平昌(ピョンチャン)冬季五輪を前にした拡張だ。この新ターミナルでも、チャンギの第4ターミナル同様、チェックインや出入国審査の自動化が進められている。

日本でも成田や羽田などで自動化ゲートの運用が広がってきた。これまで空港での煩雑な手続きは、飛行機を利用することに対する心理的ハードルなっていたかもしれない。スムーズで簡単なプロセスになっていけば、旅客をより一層増やせるチャンスになっていくだろう。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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