シンガポールに出現した「無人空港」の凄み チャンギ空港第4ターミナルが示す近未来

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シンガポール国籍や永住権を持つ人だけでなく、入国審査時に指紋を登録した人であれば、外国人旅行者でも自動化ゲートを利用できる(すべて6歳以上であることが条件)。こうしたゲートはすでにチャンギ空港の他のターミナルにも設置されているが、顔と指紋の両方を認証するシステムはこの第4ターミナルで初めて導入されたという。

出国審査の自動化ゲート。顔と指紋の2段階認証を行う(記者撮影)

出国審査ゲートを通過すると、機内持ち込みの手荷物検査だ。さすがに無人とはいかないが、ここでも最新技術が使われている。第4ターミナルの検査装置には、チャンギ空港として初めてCT(コンピュータ断層撮影)方式が採用された。乗客はノートパソコンやタブレットをかばんから取り出す必要がない。

手荷物検査では使用済みトレイが自動で回収

手荷物を入れ検査装置に送られたトレイは、問題がなければ身体検査を終えた乗客のほうに流れる。問題があれば、検査官のほうへ流れる。また、検査が終わり手荷物を取り出すと、トレイは自動的に回収され検査レーンの先頭に戻っていく。いちいちトレイを戻しに行く人員を必要としない。

保安検査場ではパソコンなどの電子機器を取り出す必要はなく、トレイも自動で列の最後尾に戻ってくる仕組みだ(写真:Changi Airport Group)

手荷物検査が終われば、あとは搭乗口に向かうだけ。ここでは通常、航空会社の地上係員がパスポートや搭乗券をチェックする。だが、これも自動化されている。乗客は搭乗券をスキャンすれば、顔写真が撮影され、出国審査ゲートで登録された写真との照合が行われる。

一連のシステム導入により、自動化していない空港に比べ、長期的な人員数を20%ほど抑えられると、チャンギ空港の運営会社は試算する。豪航空シンクタンクCAPAのチーフアナリスト、ブレンダン・ソビー氏は「空港の自動化は世界的なトレンド。第4ターミナルはその先例といえる。より大型の第5ターミナル(2025年完成予定で現在建設中)に向けた”実験場”という位置づけだろう」と語る。

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