空運業界 厳しい環境も、大手2社の信用力は当面底堅く推移 《スタンダード&プアーズの業界展望》
上席アナリスト 中井勝之
空運業界を取り巻く事業環境は一段と厳しさを増している。主要国の景気減速が鮮明になっているなか、ジェット燃料価格は年初の100ドル水準から6月には一時160ドルを超える水準まで上昇した。この影響で、規模の小さい格安航空会社の経営破たんも報じられている。グローバルの大手エアライン各社の業績にも大きな下方圧力がかかっており、2008年には、業績の悪化による格付け水準やアウトルックの下方修正が相次いだ(表1)。
ただ、日本航空(JAL)と全日本空輸(ANA)の国内大手エアライン2社の収益水準は、、燃料価格の高騰のなかでも比較的安定して推移している。スタンダード&プアーズでは、今後1−2年の業績に対する大幅なダウンサイドリスクは限定的とみており、両社の信用力は当面底堅く推移する可能性が高いと考えている。その理由は(1)燃料ヘッジ比率が高い(2)提供座席キロあたり収入の改善が進んでいる(3)一段のコスト削減余力が見込まれる−−の3点である。
両社は業績安定性の向上をめざして燃料価格の先物ヘッジを活用していて、2009年3月期の年間使用量のほとんどをヘッジ済みである(ANA90%、JAL84%)。2010年3月期分のヘッジ率はすでに年間使用量の5−6割程度に達している(ANA60%、JAL47%)。原油市況が再び騰勢を強めた場合でも、直ちに大幅な業績の悪化を招くリスクはある程度限定されると考えている。