空運業界 厳しい環境も、大手2社の信用力は当面底堅く推移 《スタンダード&プアーズの業界展望》
一方、両社の提供座席キロあたりの収入(ユニットレベニュー)は着実に改善している(図1)。引き続きビジネスクラスやファーストクラスといった高単価の旅客需要の取り込み強化の成果がみられているうえ、国内線運賃の値上げや国際線での燃料サーチャージ導入によって燃料費高騰の影響をある程度転嫁しているためである。一方で運航機材の小型化や運航路線の見直しを通じて輸送効率も向上している。両社は今後も引き続き低採算路線の運航規模の見直しを検討する方針で、当面ユニットレベニューは安定的に推移する可能性が高いとみている。
また両社は今後さらなるコスト削減の施策を示す計画である。運航規模の縮小や燃料使用量の抑制を通じて燃料費の削減を図る一方、間接部門を中心に事業プロセスの見直しで、一段のオペレーションの効率化を進めることなどが検討されている。この結果、ANAは2009年3月期も、安定して一定の利益率を維持できる見通しである(図3)。またJALの収益も、人件費の追加的削減などのコスト削減をさらに推し進めるため、底堅く推移する可能性が高い。両社については、今後1−2年で、大幅な赤字計上などの急速な業績悪化リスクは現時点では限定的と考えている。