空運業界 厳しい環境も、大手2社の信用力は当面底堅く推移 《スタンダード&プアーズの業界展望》
スタンダード&プアーズは、国内大手エアラインの今後の信用力の方向を判断するうえで、安全運航の確保、継続的なコスト抑制、運航効率やサービス競争力向上を通じた一層の業績安定性、またさらなる財務改善の見通しが重要なポイントであると考えている。以下が当面の注目点である。
今後のジェット燃料価格の動向とその業績インパクト
ジェット燃料価格の動向は、引き続き両社の業績に対する最大のリスクファクターである。短期的に下落傾向にあるものの、今後燃料価格が再び大きく上昇した場合には、燃料費の抑制策、その他のコスト削減策、運賃への転嫁の状況とそれが旅客需要に与える影響などを勘案して、今後の収益水準や収益安定性に対するインパクトを検証する。
世界的な景気減速の影響
主要各国とともに国内でも景気減速が鮮明になっているため、今後の国内線旅客需要と国際線旅客需要の動向に、これまで以上に注意を払う必要がある。比較的安定して推移しているビジネス需要の減速感が強まる可能性、すでに一部の路線で減速の兆しがある観光需要がさらに落ち込む可能性、旅客運賃の改善傾向に下方圧力が強まる可能性−−などを注視する。
今後の運航機材投資の戦略と財務へのインパクト
国内大手2社は、2010年に予定される羽田空港と成田空港の能力拡張を収益拡大に着実につなげるために、運航機材の増強を計画的に進める必要がある。また高水準の燃料価格を考えれば、燃費効率の優れた省燃費機材への機材投資の戦略的な重要性も高い。必要な戦略投資と財務健全性の維持・向上をどう実現させるのか。今後の投資負担とバランスシートへの影響にも着目する必要があると考えている。
なお代表的な省燃費機材であるボーイングの新型中型機「787」の国内2社への引き渡しが遅れていることについては、今後のデリバリー計画の確実性と、中期的な機材投資計画や収益計画への影響を検証していく。現時点においては、格付け水準に影響を及ぼすほどの要因ではないと考えている。
本誌の無断転写・複製を禁じます。ザ・マグロウヒル・カンパニーズ 会長兼社長−ハロルド・W・マグロウIII
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