「そのときは、また次がすぐに見つかると思っていたんです。でも、20代と30代とでは、恋愛もようががらりと変わった。男性から誘われて食事に行っても、その先がないんです。相手に彼女がいたり、数カ月付き合ったとしても自然消滅的に会わなくなったり。そんなことを繰り返しているうちに33歳になってしまった。そうしたらさらに出会いがなくなったのを肌で感じて、慌てて大手結婚相談所に入ったんです」
なぜ結婚相談所だったのかといえば、そこには先にも記したように、“結婚をしたい”と思っている人たちが登録している。そこで出会えば、すぐに結婚ができると思ったからだ。
「結婚相談所の男性」に抱く違和感
「ところが、お見合いするほとんどの人が、女性慣れしていない人たちでした。中には40歳を越えているのに恋愛経験がゼロなんじゃないかという人もいて、お見合いしても会話が成り立たなかった」
宏美が言うように、30代後半、40代、50代の初婚者は、恋愛経験が少ない(もしくは、ない)人たちが多い。言葉を換えれば、だからその年になっても独身なのだ。
恋愛経験の少ない男性は、お見合いで女性と対峙すると妙に緊張しまう。考えてきた自己紹介をし、用意してきた質問を一通りすると、そこで会話が終わってしまう。質問も一問一答形式のことが多く、会話が膨らまない。
宏美は、「かつてこんな見合い相手がいた」と苦笑いしながら言った。
「日比谷公園近くのホテルでお見合いをした男性なんですけど、最初の15分くらいで会話が尽きてしまった。そうしたら、すぐ近くにある日比谷公会堂の歴史の話から大正、明治維新の話になって、江戸時代、戦国時代へとさかのぼって、戦国武将の話を延々しだした。お見合いの席ですよ。途中から相づちを打つことにも疲れてしまいました」
また宏美は、“こんな男性も多かった”と、見合い相手を振り返った。
「お酒が飲めない人が多い気がしました。趣味の欄に、筋トレと書いている人も。体型がお写真よりも1.5倍はあるんじゃないかという人もいたし。それでもお話が楽しければいいんですけど、時間を忘れて会話が楽しめた方はまずいなかった」
そんな中でも1年経った頃、10歳上で楽器メーカーに勤めている男性とお見合いをし、お付き合いをするようになった。ピアノの調律師をしていて、趣味のジャズの話が楽しくできる人だったからだ。
「見た目とか全然タイプではなかったんですよ。背も私のほうが2~3cm高かったし。ただ婚活を1年してみて、見た目にこだわっていたら結婚できないってわかったんです。好きなことが一緒で、話が楽しくできる人ならいいやって。彼は、『結婚してからも、バーやジャズクラブでピアノを弾き続けていいよ』と言ってくれたし、彼となら自分らしい結婚生活が送れるんじゃないかと思ったんです。ただ……」
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