小米のトップは1969年生まれの雷軍という人物である。武漢大学のコンピュータ学科を卒業後、ネット事業に挑んで何度が小さな成功と失敗を繰り返しながら、2010年4月に小米科技を創業。優秀な人材をそろえ、スマホ事業に乗り出した。名前はいかついが、外見はいかにもPC時代に育った青年という雰囲気が漂う。
昨年は750万機を売り上げ、中国ではサムスン、アップルに続く第三勢力にのし上がった。今年は上半期ですでに700万機を突破しており、1500万機だった目標を2000万機に上方修正、アップルを抜くという見通しさえある。この雷軍という人、新製品の発表ではスティーブ・ジョブスと同じように、黒いTシャツとジーンズという格好で登場してくるなど、アップルのマネもここまでくると逆に面白いぐらいで、今や中国では、アリババドットコムの馬雲、検索エンジン最大手の百度(バイドゥ)の李彦宏などと並んで、ウェブ時代のカリスマ経営者として若者に崇拝されている。
この小米のビジネススタイルでいちばん独創的なのは、「米粉」(粉はファンという意味。米粉でビーフンの意味がある)というファンクラブを作って、中国各地に「小米之家(小米ハウス)」を立ち上げている点だろう。
熱狂的な支持者を抱え込み、その会員数は900万人近くまで膨らんでいる。小米は、彼らに優先的に商品を卸すことで、宣伝費をかけず、通信キャリアも通さずに、新発売で一気に数百万台もの製品をさばくことができる。7月の新商品の発売に際しては90秒で10万機を売り切ってしまったという。また、何かと使い勝手や流行に敏感な米粉たちの意見や不満を素早く採り入れることも、ファンの結束を高めると同時に、商品の完成度を上げることにも役立っていると言われている。
価格は、iPhone廉価版の半分以下
小米とはもともと雑穀の一種類を指す中国語で、普段われわれが食べている白米の「大米」に比べて一回り小さいから「小米」と呼ばれている。醸造酒に使われたり、おかゆに入れられたりと、用途は広いが「大米」に比べて値段も安く、食品としてはあまり尊重されていない。そんな「小米」という名前をつけるあたり、アップル、サムスンという超大手の先行者に対して、小さいながらも果敢に戦いを挑んでいく気概を表している。
最初はよくある中国の安かろう悪かろうのメーカーというふうに見られて、学生やブルーカラーの労働者しか買わないスマホだと見下されていたが、最近は、グーグルのアンドロイド開発担当幹部だったヒューゴ・バラまでヘッドハントするなど、世界的に注目されるまでに成長してきている。
小米の最大のアピールポイントは価格だ。SIMフリーの最新機は1999元。日本円にすれば3万2000円程度で、iPhoneの廉価版であるiPhone5cの4488元の半分以下である。機能的には小米の最新機は上位機であるiPhone5sに匹敵するとの評価もあるので、5sの価格の5288元と比較すれば、5分の2ぐらいになる。iPhoneユーザーであることを周囲に自慢したい消費者でなければ、純粋に価格と性能のバランスからして、小米を選ぶのも不思議ではない。
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