3つ目は、社員を見下さない。上から目線での物言いをしない、「高下駄を履いてものを言わない」ということです。いつも申し上げていますが、社長と社員の関係は、上下関係、縦の関係ではなく、役割分担の関係、横の関係です。それぞれがそれぞれの役割をきっちりと果たしていく。そういう意識を持ってこそ、風通しのいい会社、成長する会社になっていくものです。
まして、おのれの無能さを棚に上げて、うちの社員はダメだと公言する経営者は論外です。私からすれば、そういう経営者のほうがダメだと思います。命令口調で社員に指示することも許されるべきではありません。厳しい言い方ですが、それでは経営者たる資格はありません。横の関係であれば、経営者は社員に相談調でお願いする。心の中で手を合わせながら、指示を出すはずです。
世の中には責任を取らない経営者が多すぎる
4つ目は、「責任を取る」ということです。世の中には責任を取らない経営者が多すぎます。不正会計の責任を取らない。不良品で事故が起こっても責任を取らない。巨額な赤字を垂れ流していても居座り、責任を取らない。それでは社員の間に緊張感が出るはずもなく、したがって、業績が上がるはずがありません。
某社の若い社員から聞いた「責任を取らない社長」の話を思い出しました。その若い社員が新規取引先を開拓したところ、幸いにしてうまくまとまる寸前になった。そこで、社長も商談に行くことになり取引先に出掛けた。ところが、社長が取引先の部長の個人的な話をしたことから、その部長を傷つけてしまい、契約がうまくいかなかったそうです。にもかかわらず、社長はその責任を若い社員に押し付けて、「うまくいかなかったのはお前のせいだ。お前がもっと話を詰めておくべきだった」と責めたのだそうです。彼は大いに憤慨して、自分の責任を社員に転嫁する社長の無責任さには腹が立つと言っていました。
余談になりましたが、会社においては、経営者は「責任はわれ一人(いちにん)にあり」という自覚と胆力がなければならないでしょう。
5つ目は、「勝てば官軍という考えを持たない」ことです。なにをしても法に触れなければいいという経営の仕方は、結局は社員から軽蔑され、お客様が離れ、社会の信用を失うということは覚えておくべきでしょう。法を基準にして、経営、商売をすることほど危ういものはありません。いつでも、どのような場合でも「人間」を出発点にして経営を考えていかなければ、ある日突然、氷山に衝突して会社は沈没してしまうでしょう。
勝てば、なにをしてもいいという発想ではなく、もちろん、勝つこと、利益を上げることも大事ですが、その利益の「上げ方」に心をいたす。「勝つ美学」と同時に、「勝ち方の美学」も持つ。そのことによって、社員もまた、人間としてふさわしい、人として正しい取り組みで成果を上げるようになる。そして、お客様も世間様も大いに評価し、そして、会社は発展するということになります。まかり間違っても「勝てば官軍」という発想を持たないことです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら