4億円を仮想通貨で集めたベンチャーの正体

新たな資金調達手法「ICO」の魅力と課題

アリスとしては、今回調達した潤沢な資金を活用し、2018年4月に向けて計画通りサービスを立ち上げることが、今後の最重要課題になる。水澤氏は、「自分たちがやってきたことは永久に残り続けるから、プレッシャーは本当に大きい」と話す。投資のプロであるベンチャーキャピタルならば、出資先の事業が失敗しても、「投資した自分たちが悪い」と納得するだろう。だがICOでは状況が違う。

資金を提供しているのは、会社の理念に共感し、プロダクトが発展するという期待を持った一般のユーザーだ。彼らは、高いリテラシーがあるわけではないし、議決権など株主が持つ権利も持たない。それゆえ、運営側は誠実に考えれば考えるほど、事業を成功させてユーザーとの「信頼関係」を維持し、発展させていく責務があるわけだ。アリスは、2018年4月に向けて、プロダクトの開発に着手済みで、採用も進め始めているという。

金融庁はICOに注意喚起促す

金融庁もICOには注目しており、10月27日に利用者及び事業者に対して注意喚起を出した。特に利用者に対しては、「ホワイトペーパーに掲げたプロジェクトが実施されなかったり、約束されていた商品やサービスが実際には提供されないリスクがあります。また、ICOに便乗した詐欺の事例も報道されています」と踏み込んだ表現を使っている。

今のICOは、情報の非対称性が大きく、事業者が資金を提供してくれたユーザーに対して、どこまで誠実に考えるかが拠り所になっている面が大きい。安氏は「ICOによって資金調達したプロジェクトを成功させるには、誰もが欲しがる魅力的なトークンを設計し、それがビジネス自体を成長させていくような仕組みを作ることが重要。私たちが今回得た知見は、どんどんオープンにして、後続に伝えていきたい」と話す。

日本発のICOはさらなる広がりをみせるのか。その行方は、先陣を切ったアリスの事業の成否も大きなポイントになる。

週刊東洋経済10月30日発売号(11月4日号)の特集は「ゼロから分かるビットコイン」です。
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