4億円を仮想通貨で集めたベンチャーの正体 新たな資金調達手法「ICO」の魅力と課題

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アリスはデータをチェーンのようにつなげて、誰もが閲覧でき、お互いに監視するネットワークである「ブロックチェーン」の技術を使い、ユーザー同士で直接課金できるメディアプラットフォームの構築を目指している。良質な記事を書いた人と、その記事をいち早く見つけて評価した人に対してトークンが分配される仕組みで、広告モデルには依存しない。

ただ、実際のプロダクトはまだ開発中で、2018年4月にテスト版を出す予定。それでも、ICOの準備からわずか3カ月強で日本円にして約4.3億円を集めた。

事業計画だけを示し、プロダクトが存在しない状態で資金を募るICOは、運営者がユーザーにどれだけ信頼されるかに懸かっている。そこでアリスが行ったのはあらゆる情報の公開だった。

アリスはトークン発行にあたり、経営メンバーへの報酬の配分比率をはじめ、「Trello(トレロ)」と呼ばれるプロジェクト管理ツールの内容など開発過程における社内でのやりとりもすべて公開した。ある金融系ベンチャーの関係者は、「投資家にとって本当に意味のある情報を公開できているかは疑問」と指摘するが、通常ならば社外秘の情報をオープンにしたことは確かだ。

投資家と運営側でコミュニティを形成

また、ICOの特徴は、投資家と運営側でコミュニティが形成されることにもある。メンバーとなった投資家は、プロダクトに役立つ意見を出したり、有力な人材を紹介したりすることはもちろん、情報発信の提案や、「エンジニアであれば、コードを修正してくれることもある」(石井氏)という。通常、情報収集やマーケティング活動などは企業がコストをかけて行うが、ICOのプロセスでは参加した投資家たちが「自分ごと」としてそこに積極的に関わるようになる。

安氏は「ICOのメリットは、投資家がサービスのファンになること。企業がユーザーのニーズを直接とらえ、ユーザーと一緒にプロダクトを作ることができる。これはビジネスの本来の姿だと思う。資金調達だけでなく、事業開発自体が民主化する時代がようやく来たと感じる」と語る。

グローバルで仮想通貨による資金を調達する道のりは未知の世界だった。特に困難を極めたのが、24時間出没し続ける詐欺グループ対策だ。アリスはユーザーとのコミュニケーションにビジネスチャットツール「SLACK(スラック)」を使用している。

その中で運営者のフリをして、ニセの情報を流す悪質なアカウントが現れることがあった。そのため、安氏ら3人は、24時間体制で交代して監視に当たり、詐欺アカウントが現れるたびに警告を出し続けた。

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