「キャリアアップ=転職」ではない
ここではビジネスパーソンの価値というものを分解して整理してみます。一般的にスキルと呼ばれるものもこの価値に含まれています。価値は下記の5つの要素に分解可能です。
1. 基礎能力(論理的思考力、コミュニケーション能力、リーダーシップ、会計・法務知識、語学力など)
2. 業界の知見
3. 社内外の人脈
4. 社内向け業務知識
5. 勤務先企業のブランドやカンバン
これらのビジネスパーソンの価値のうち、1から3までは転職などで社外に出ることになっても持ち運び可能なポータブルな価値だといえます。4と5は社外に出ると価値の消えてしまうものです。「社内向け業務知識」とありますが、社会人として生きていくためには「社内のお作法」は極めて重要で、社内の根回しの方法、稟議の回し方、社内用語などと、お作法を理解していないと仕事になりません。
しかし社内のお作法しか知らず、ポータブルな価値がないと、ある日「残念だけど、君はもう村人ではないんだよ」と言われて会社を放り出されたときに、他社では生きていけなくなります。自分の就職した先が未来永劫あればいいですが、これだけ社会の移り変わりが早いと、そんな会社はなかなかないものです。食生活の話のようですが、社会に出たら上記の価値をバランスよく伸ばしていくことが大切です。
質問者の方は「つねに転職することを視野に入れたうえでこれから働いていきたい」とおっしゃいますが、肝に銘じていただきたいのは、「キャリアアップ=転職」ではないことです。可能であれば自分の慣れ親しんだ業界、会社で出世していくことが最も効率的です。他社に移るということは1から3までの価値だけを武器に、慣れない場所で、新しい上司や同僚たちの「ホントにできんの?」という生暖かい視線の中、期待値を超えることだからです。
本当に強い組織というのは、無名企業でもクソベンチャーでも「オレ(私)がこの組織を一流にするのだ」と思っている人がたくさんいる組織です。全員が腰掛け気分の組織が強いわけはありませんし、このボラティリティの高い世の中では、若い人たちは一流の組織に入るより、入った組織が一流になるほうが、一流である時間は長いものです。
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