JR九州を猛烈に突き動かした「逆境と屈辱感」 「本気になって何が悪い」著者の唐池会長語る

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――JRになって4年、海を舞台に高速船ビートルの国際航路が開業しました。「海のものとも山のものともつかない事業になぜか喜々として取り組む唐池恒二がいた」という一文が本文にあります。

唐池恒二(からいけ こうじ)/1953年生まれ。京都大学法学部卒業後、1977年国鉄入社。東京、福島勤務を経て1983年大分鉄道管理局配属から九州勤務始まる。87年のJR九州発足後、D&S(デザイン&ストーリー)列車や高速船就航、外食事業黒字化などに尽力。2009年社長、2014年会長就任(撮影:梅谷秀司)

ああ、ねえ。JRになって一気に新事業に取り組みだし、牽引役に若手のエースを投入してきました。僕がエースだったかどうかは別にして。ビートルという海の事業を始めたときは、今のままの鉄道だけじゃやっていけないとみんな意識してました。だから船舶は訳のわからん未知の事業だけど、送り込まれた僕はうれしかったですよね。

ビートルは当初苦戦したけど、数年後僕が外れた後軌道に乗り、本当によかった。僕は丸井でもビートルでも、すばらしい上司や相方に巡り合ってきたんですよ。外食で東京進出した際は3代目市川猿之助さんだった。JR30年でこれほどいろんな仕事をし、これほどすばらしい人たちと出会えてきた。何と幸せ者かと。

――外食再建時、「店に『気』を満ちあふれさせよう」と話をされた。

キビキビした動き、明るく元気な声、緊張感、よくしようという貪欲さと夢見る力を持とう、と呼びかけた。気に満ちた店はみな調子がいい。黒字化が見えたとき、高級焼き鳥店の東京進出を宣言した。手間を惜しまずやりたくなる夢をリーダーは描く。次の夢を描かなければ組織は停滞する。夢があるから進むべき方向を見失わない。ね。するとまた気が満ちてくる。それが大きな組織、一人ひとりの人間を動かす力になります。

外食事業での経験が、世界一のレストランだったスペインの「エル・ブリ」に触れることでさらにインスパイアされ、2013年の豪華寝台列車「ななつ星in九州」運行につながったんです。

夢のない組織なんて何をしていいかわからん

――対決型マーケティングという手法を多用されてきましたね。

大分vs.鹿児島の観光キャンペーン、ビール会社同士を競争させるビアレストラン、整理・整頓・清掃・清潔・しつけの5Sと電話応対、接客態度などについて全駅・事業所を覆面調査し会議の席順をランキング順にする全事業所ランキングなどいろいろ。みんな頑張るんですよ。勝負となるとみんな勝ちたい。競争原理を導入しないと切磋琢磨はない。そのうえで経営者はつねに新しい夢を提示し続ける。ね。夢のない組織なんて何をしていいかわからんじゃないですか。

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