「観光列車大競争」でJR九州が勝ち残る秘策

凄腕デザイナーがデザインを白紙にした理由

新たな観光列車「かわせみ やませみ」の前に立つ、水戸岡鋭治デザイナー(左)と青柳俊彦社長(撮影:尾形文繁)

JR九州の観光列車「かわせみ やませみ」が3月4日から熊本―人吉間で運行を開始した。同社にとっては11本目の観光列車。豪華寝台列車「ななつ星 in 九州」を加えれば、12本目となる。

列車は2両編成。JR九州の多くの観光列車と同様、中古車両を改造したものだ。製造費の総額は2.3億円。2015年に登場した10番目の観光列車「或る列車」の製造費は5.7億円だったので、半分以下のコストしかかかっていない。もっとも、「或る列車」は「ななつ星」を上回る豪華絢爛な内装を売り物としており、「組子細工の格子など費用のかかる装飾をたくさん施しているので割高になった」(JR九州)。2011年に登場した「指宿のたまて箱」の製造費は2億円弱だったので、金額面ではこちらと比較するほうが適しているだろう。

乗車して初めてわかる"変化"

木をふんだんに用いた内装、窓向きに設置されたカウンター席、軽食や飲み物を提供するビュッフェ。これらはJR九州の観光列車の多くに共通する特徴だ。JR九州の車両デザインを一手に引き受ける水戸岡鋭治氏が今回も担当しているので、既視感があるのは当然といえる。しかし、実はその製造工程において大きな変化があるのだ。

JR九州は観光列車をD&S列車と呼ぶ。デザインの「D」とストーリーの「S」。特別な「デザイン」と地域に基づく「ストーリー」を兼ね備えた列車という意味だ。

デザインは見ればわかる。しかし、「地域に基づくストーリー」は見ただけではわからない。実際に乗車し、沿線の風景を見て、客室乗務員のサービスを受け、地元の名産品を食べたり飲んだりすることでわかってくるものだ。

これまでも同社の観光列車はこうしたストーリー性を打ち出してきたが、「かわせみ やませみ」はどの観光列車よりも地域とのかかわりが強い。

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