12月11日は、欧州の鉄道にとって節目といえるような日になりそうだ。
日本と同様、欧州でも夜行列車の斜陽化が著しいのだが、この日のダイヤ改正に合わせ、オーストリア連邦鉄道(OBB)が新たな夜行列車のマーケット開拓に挑むのだ。一方、同じ11日に、スイスでは青函トンネルを上回る世界最長の「ゴッタルド基盤(ベース)トンネル」を通る列車が営業運転を始める。
長距離バスや格安航空(LCC)に押されて久しい欧州の鉄道界だが、こうした新たな動きが復権の起爆剤になるのだろうか。
ドイツ撤退の寝台夜行事業に救世主現わる
西ヨーロッパの主要な寝台付き夜行は、複数国をまたいで走る列車のサービス画一化や車両運用の効率化などを図るため、1995年以降「シティナイトライン(CNL)」のブランドで運行されてきた。しかし、2015年12月、CNLの親会社にあたるドイツ鉄道(DB)がこの事業からの撤退を決定、欧州からこのまま夜汽車が一気に減ってしまう状況さえ危惧された。
CNLは、主要顧客層を「多忙なマネジャークラスのビジネスマン」と設定した。5つ星ホテルの施設かと見まごうラウンジバーや高級感あふれる食堂車やシャワー付きシングルルーム、室内で打ち合わせができる大きめのツインルームなどを設けた車両を連結。「それなりのおカネを払ってくれる層」に訴える戦略が当たり、当初は上々な滑り出しを見せた。しかし、ICEをはじめとする高速列車の時間短縮やLCCの出現、車両の経年劣化などにより利用者の減少は止められず、赤字が続いたことから、ついに事業売却を決める格好となった。
一時は宙に浮いてしまう可能性もあったCNL。DBが継承先を探した結果、隣国・オーストリアのOBBがなんと車両ごと引き受け、新たな寝台夜行事業を立ち上げることになった。
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