日本人が知らない欧州「寝台列車」の超絶進化 長距離バスやLCCに負けてばかりではない!

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ダイヤ改正に合わせ、チューリッヒとミラノを結ぶ国際列車や国内のインターシティー(IC)が基盤トンネル通過の新線経由に置き換わる。その結果、全体の所要時間が30分ほど短縮される。一方で、従来の山線経由列車の存続も決まっている。

むしろ大きく変化するのは貨物列車の運行だ。従来の山線経由で1日の通過本数が160本だったものが、新線経由で210本に増える。コンテナを載せたトレーラーをそのまま貨車に乗せて運ぶ「モーダルシフト」がさらに普及するだろう。

「飛行機で飛ぶとただ時間を失うだけだ」

線路が折り重なる風景も引き続き楽しめる(ゴッタルド山線にて=筆者撮影)

スイス国鉄(SBB)は基盤トンネルの列車運行開始により、このエリアへの注目が高まることを見越し、来夏から新たな観光列車「ゴッタルドパノラマ急行」の運行を決めた。同列車は日本人にも人気が高い「氷河急行」や「ベルニナ急行」と同等の特別列車となることから、新たな観光資源として積極的なプロモーションが行われることだろう。

スイスのメディアは今冬のダイヤ改正概要を伝えるに当たり、鉄道旅行を好む老学者のこんな言葉を引用している。曰く、「列車の旅なら、車内で本が読める、仕事ができる、居眠りもできる。飛行機で飛ぶとただ時間を失うだけだ――」。

今回のダイヤ改正に伴う動きが欧州全体の鉄道の復権にどの程度つながるのだろうか。経過を引き続き見守りたい。

さかい もとみ 在英ジャーナリスト

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Motomi Sakai

旅行会社勤務ののち、15年間にわたる香港在住中にライター兼編集者に転向。2008年から経済・企業情報の配信サービスを行うNNAロンドンを拠点に勤務。2014年秋にフリージャーナリストに。旅に欠かせない公共交通に関するテーマや、訪日外国人観光に関するトピックに注目する一方、英国で開催された五輪やラグビーW杯での経験を生かし、日本に向けた提言等を発信している。著書に『中国人観光客 おもてなしの鉄則』(アスク出版)など。問い合わせ先は、jiujing@nifty.com

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